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STORY 54 ページ4

はぁと熱い吐息をひとつ零して、一度俺に視線を合わせたAがゆっくり動き始めた。
窓から覗く月を背にして俺の上で揺れ続けるAはいつにも増して妖艶で。
こんな姿を見せられてしまったら、もう欲望を抑えきれない。
俺はその細い腰を強く掴むと下から激しくそのしなやかな身体を突き上げる。
そして、Aが限界を向かえてそれを強く締めつけたのを合図に俺はそのまま欲を放った。
繋がった形のまま身体を預けてきたAのことを力強く腕に抱く。
火照ったAの身体がなんだかとても肌に心地良かった。

その夜、俺達は何度も何度も身体を重ねた。
この日のAはなんだかいつもと違っていた。
大胆で、そして何度も俺を求めてくる。
この時気づいてやれば良かったんだ。
あいつの辛く切ない胸の内に、気づいてやれば良かった…





「単刀直入に言います。てつやと別れて下さい」

てつやさんのお家の使いの人を宿へ通してある部屋の中。
私達は向き合う形で座って、それから静かにでもはっきりした口調でそう言われた。

「…え?」
「あの人には許婚がいるんです。もう祝言の日取りも決まっています、だからあなたから別れを切り出してほしいんです」

そんな言葉に私の視界に入る物全てが色を失っていく。
でもそれは当たり前のことだった。
てつやさんのお家は私なんかが到底相手にしてもらえるようなそんな家柄ではないことは、前々から充分に分かっていたことだったのに。
だけどそんな当たり前のことを私はすっかり忘れてしまっていた。
てつやさんからたくさんの優しさと愛を注いでもらっていたから。
だから私達の身分の差を、どんなに足掻いても決して結ばれないということを忘れていた。

「あの人は今あなたに夢中で周りがまるで見えていない。私達がどんなにてつやにあなたと…Aさんと別れろと言っても聞かないんです。だからどうしてもあなたから別れを切り出してもらう以外にあの人を納得させる方法がないんです」
「…祝言はいつなんですか?」
「三ヶ月後です」
「そんなに早く?」
「あなたとの話を聞いたてつやのご両親が日取りを早めたんです」

別れたくないと言ったとしても、きっとどうにもならないだろう。
そして私にはそんなことを言う資格すらない。

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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました! (2021年4月27日 21時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます!この作品に出会えて良かったです! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました! (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました!とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かえで | 作成日時:2018年3月6日 17時

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