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STORY 80 ページ30

祝言当日。

とうとうこの日が来てしまった。
今日は家の中が朝から慌しい雰囲気に包まれている。
それとは対照的にここだけはとても静かだ。
身支度を終え、一人きりの部屋の中。
目を瞑り外のそんな喧騒を遠くに聞いていた。
ふと瞼を開き窓の外を見る。
今の俺の気持ちとはまるで正反対の、どこまでも続く澄んだ青空がそこには広がっていた。

「なんでこんなに晴れてんだよ…」

嫌味なほど澄み切った青空が憎かった。
俺の心の中はAと別れてからずっと曇ったままなのに…
だけどどんなにあいつのことを思っても、今ではもう全てが無駄なんだ。
何もかもが、もう遅い。
そう、Aは俺よりもりょうを選んだんだから。

やり切れない思いに視線を逸らそうとした時、二つの真っ白な雲が寄り添って緩やかに流れていくのを見た。
俺はそこからなぜか目を逸らすことが出来なくなる。
広い広い青空に白い雲が二つ。
後は何もない、ただそれだけ。
それだけのことだったけれど、そこに俺は何か自分のするべき答えを見つけた気がした。
本当にもう遅いのだろうか?
俺はAに正直な自分の気持ちをまだ伝えていない。
俺が本当はどう思っているのか。
この先の未来を誰と歩んで行きたいと願っているのか。
それを告げもせずに、本当にこのまま祝言を挙げてしまっていいのだろうか。


「お待たせしました。花嫁さんの支度が整いましたので大広間の方へお願いします」

ざわが俺に呼び掛けてくる声が遠くの方からしていた。
本当に俺はこのままでいいのか…?





「A、すごく綺麗だよ」
「本当に綺麗だよ、Aちゃん。そこら辺のお姫様なんか目じゃないよ」

月子さんは目を細めながら私を見つめ、ゆめまるさんは満面の笑みを浮かべながら私にそう言ってくれた。

「ありがとうございます…」
「ほら、しばゆーも何か言ったらどうだよ。ぼけぇっと突っ立ってないでさ」

言葉なく私を見つめ続けていたしばゆーさんは、ゆめまるさんに肩を叩かれて少しよろめくとやっと我に返ったように慌てて口を開いた。

「やぁ…すげぇ綺麗だから言葉が出てこなかった…」
「ほんとだよな、この世の人とは思えないないくらいだな」

花嫁衣裳に着替え終わった私は自室でお式の準備が整うのを待つ間、ゆめまるさんと月子さんとしばゆーさんに囲まれて和やかな雰囲気に包まれていた。

とうとうこの日がやって来た。
りょうさんの下へと嫁ぐ日が。

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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました! (2021年4月27日 21時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます!この作品に出会えて良かったです! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました! (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました!とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かえで | 作成日時:2018年3月6日 17時

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