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STORY 76 ページ26

「失礼します」

部屋の外から声がして、その後からざわが静かに俺の自室へと入ってきた。
俺は窓辺に座ってぼんやりと窓の外の風景を眺めていた視線をゆっくりそちらへやる。

「明日の結納の件ですが」
「その話なら俺からは何も意見はない、さっさと進めればいいだろ」
「えらく素直ですね。前までのあなたが嘘のようだ」

ざわの言葉には何も答えず再び俺は外へと視線を戻した。
Aと一緒にいられないならもう何もかもどうでもいい。
自分の結婚のことでさえも少しの興味すら湧いてはこない。

「あぁそう言えば。りょうさんとAさんも祝言挙げるそうですよ」
「…え」
「一ヶ月後だそうです。あなたの祝言と同じ日に」

再びざわへ視線を戻した俺の思考はその時完全に停止していた。

「これで良かったんです。ずっとAさんには申し訳ないことをしたと思っていました。だから幸せになってもらいたいです」

言葉を失う俺にざわはそう告げ。

「結納の件、進めさせてもらいます」

部屋を出ていった。

Aとりょうが結婚する。
完全にAが俺の手の届かないところへ行ってしまう。
ざわから告げられた現実にしばらくの間、俺は呆然となりその場からまったく動くことができなくなっていた。

俺達はこのままもう二度と、想いを重ね合わせることはないのだろうか…





「A、あんた本当にいいの?」

月子さんへ顔を向けたら私を真剣な眼差しで見つめている瞳と目が合った。

「このまま本当にりょうと結婚しちゃってあんたはそれでいいの?」

月子さんに微笑むと私は大きく頷く。

「はい」
「A、でも!」
「これで良かったんです。きっと最初からこうなる運命だったんですよ」
「そんな…だって、あんたが本当に好きなのは…」

月子さんが私に言おうとしていることがなんなのか、それは充分に分かっていた。
私が本当に好きな人、それは…

「どんなに好きだったとしてもどうしようもないんです」
「A…」
「てつやさんのことは愛し過ぎてしまって、いつもどこか不安で不安で怯えていました。でもりょうさんと一緒にいると、あぁ私は守られているんだって安心するんです。いつも心が穏やかで、りょうさんの大きな愛情に私も答えたいって心から思うんです。だから…」
「もういいよ、A。分かったから…」

月子さんはそう言うと優しい微笑みで私を見つめていた。

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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました! (2021年4月27日 21時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます!この作品に出会えて良かったです! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました! (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました!とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かえで | 作成日時:2018年3月6日 17時

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