STORY 51 ページ1
「あぁ、ちょっと掠ったか」
「ごめんなさい、私のせいで」
自分の着物の裾を裂いて私はそれをその人の腕へと強く巻きつけた。
「宿へ来て下さい。傷手当しないと」
宿の中へ案内しようと顔を上げたら目が合って、私に優しく微笑みかけながらその人は呟いた。
「なるほど、あの人が夢中になるワケだ」
「え…？」
「悪かったね、ざわくん。本当に助かった」
「いえ…」
「それにしてもなんでこんな所に？何か用でもあるの？」
「まぁ…実はAさんに話があって来ました」
「え？」
りょうさんと会話をしていたその人が、もう一度私に視線を向けると再び微笑んだ。
「僕はてつやの家の使いの者です、あなたに話があります」
てつやさんのお家の人？
そんな人が私に何の用があるというのだろう。
しかしこの時告げられたのは、私を幸せの絶頂から呆気なく引きずり下ろすような内容だった。
「なんだよ、話って」
椅子に座り机に頬杖をついている。
りょうの目の前に立ち、俺は真剣な眼差しを向ける。
Aが待つ部屋へ行く前にりょうの元を訪ねていた、その理由は。
「Aを身請けしたい」
俺の申し出を聞いてこちらを一瞥した後、りょうは立ち上がり窓辺に移動した。
そして俺に視線を移すと口を開く。
「悪いんだけどな、てつや。その話は断る」
意外な言葉に一瞬戸惑った。
「はぁ？なんでだよ！」
「なんで？それはお前が一番よく分かってるだろ？」
「なんだ、どういうことだよ」
「お前もう既に隣町の地主の娘との祝言が決まってるんだろ？」
りょうが投げかけてきた言葉に俺は動揺を隠すことが出来ずにいた。
「なんで知ってんだよ、そのこと」
「俺がなんで知ってるかなんて今はどうでもいいだろ？ちょっと考えたら分かるよな、許婚のいるようなヤツにどうしてAを渡せると思う？」
「それは家が勝手に決めたことだ、俺は承知した覚えはない！俺が一緒になりたいのはAだけだ」
「あのさ、お前自分の立場分かってる？お前が思ってる以上にお前の家は由緒ある家なんだぞ。そんなとこの跡取りが自分の我儘を本当に通せると思うか？考えが甘いんだよ」
分かっている。
俺とAが一緒になるにはあまりにも障害が大きすぎる。
だけどどうしてもAだけは諦めたくなかった。
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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました！ (2021年4月27日 21時) (
レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます！この作品に出会えて良かったです！ (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました！ (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました！とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年3月6日 17時
