STORY 56 ページ6
翌朝になり身支度を整えたてつやさんは、私の目の前に立ちその優しい微笑みを私に向けてくれた。
「A。俺な、昨夜りょうに話した」
「え、何をですか？」
「身請けの話だ」
「…」
「どうした、なんでそんな悲しい顔するんだよ？」
てつやさんはふっと笑うと私の頬に触れてくる。
「安心しろ。お前のこと絶対に身請けしてやるから」
てつやさんの言葉が私の心を締めつけて苦しく苦しくて…
「じゃあ、行くわ」
これでもう本当にお別れをしなければならないのかと思うと、てつやさんと目を合わせることがどうしても出来ない。
「どうしたA、俺行くぞ？」
「あ、は、はい…お気をつけて…」
慌てて顔を上げたのと同時に私の唇にそっとてつやさんの唇が優しく触れた。
これが最後の口付けなのかと思うと泣きそうになる…
「また今晩来るからな」
「あ、あのてつやさん！」
優しい眼差しでそう私を見てるてつやさんに、私は別れを告げようと口を開いたのだけれど。
「なんだ？」
「…い、いえ。なんでもないです」
「本当、どうしたんだよ。お前なんかおかしいぞ？昨夜はなんかすごかったしなぁ」
「え、なっ⁈」
「まぁ俺はそんなお前も大歓迎だけどな」
てつやさんが笑いながらそう言って私をからかう。
言えない、あなたにお別れなんてどうしても言えない…
「じゃあ、行くぞ？」
「あ、はい」
こちらに背を向けたてつやさんの名前を大きな声で私は呼んだ。
「てつやさん‼」
そんな声にてつやさんがこちらへと振り返った時、やっと作った微笑みを送りながら私は言った。
「さようなら…」
訝しげな顔でそんな私を見つめたてつやさんは。
「またな」
すぐに優しい笑みを取り戻して一言だけ私にそう言うと、またこちらに背を向け歩き出した。
「さよなら、てつやさん…」
愛しい人の背中にそう呟いた時、堰を切ったように涙が私の頬を伝っていった。
これが私の精一杯のさよならだった。
どうしてもあなたからのさよならは聞きたくなんかなかった。
だから一方的になってしまうけれど許して。
私のこんな別れの告げ方をお願い、許して…
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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました！ (2021年4月27日 21時) (
レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます！この作品に出会えて良かったです！ (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました！ (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました！とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年3月6日 17時
