秘密のデート 4 ページ40
この時間だけの恋人…
私達は黙ったまま見つめ合い、そしてどれくらいの時が経ったろう。
それは短い間だったかもしれないけれど、私にはとても長く感じていた。
虫さんの願いにどう答えたらいいのか分からなくて私はそのまま俯いた。
するとそっと手がこちらに伸びてきて、それは私の手を優しく握り締める。
その手は思った以上に大きくて、そしてとても温かかった。
「ざわくん」
大好きだった。
ざわくんに出会って、人を想う大切さにやっと気づけた。
恋をすることがどういうことか思い出せた。
本当に、私はあなたが大好き…
見つめる先にある二人握り合った手と手が涙で歪んで見える。
「僕にもう少し自信と勇気があったら良かった…」
顔を上げてざわくんを見れば、哀しみを秘めたように笑っていた。
そんな表情にまた泣ける。
次の瞬間、ざわくんに手を引かれそのまま私はそっと抱きしめられた。
瞳を閉じたら髪を優しく撫でる手のぬくもりが心地いい。
「Aちゃん、さっきてつやのどこが好きか分からないって言ってたよね」
「うん」
「それはてつやがAちゃんの傍にいることが必然だからだよ。Aちゃんにとって、てつやの代わりはどこにもいないんだ」
「…え」
「てつやとなら絶対幸せになれる」
「…うん」
「幸せになって、Aちゃん。世界中の誰よりも」
「うん！」
私はその背中に腕を回して強く抱きしめ返した。
そうしたらざわくんの腕にも力が入る。
この人を好きになって良かった。
気持ちが報われることのない、悲しい片思いだった。
辛くて苦しくて、朝まで泣いたこともあった。
傍にいるのが切なくてメンバーを辞めようかと思う時もあった。
だけどそれ以上に、嬉しいことも楽しいことも幸せもいっぱいあった。
「ありがとう、ざわくん」
「僕はこれからも変わらずにAちゃんといい仲間でいたいって思ってる」
仲間、なんて都合のいい言葉なんだろうと思ってしまった。
そうだよ、ざわくんにしてみればそれ以外の形容詞なんてないんだろう。
分かってるよそんなこと。
それでも私が欲しかったのはそんなモノじゃなかった…
「ごめんね、Aちゃん。好きだよ」
こんな悲しい告白は嫌だよ。
どんなに想っても、諦めなきゃいけない恋もあるんだね。
だけど今だけは現実を忘れたい。
この瞬間だけでいい、もう少しだけあなたの恋人でいさせて。
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かえで(プロフ) - 七海さん» ありがとうございます。ついざわくん絡みの話を書きたくなってしまいますw更新頑張ります！ (2018年4月25日 15時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - ざわくんを想うヒロインの気持ちがいつも繊細でとても感情移入して読んでます。これからも更新楽しみにしてます。 (2018年4月24日 17時) (レス) id: ff325b6cef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年2月21日 12時
