いのちのうつわ 9 side MUSHIMEGANE ページ26
驚いたような表情をしたお母さんと二人、声を出して笑う。
その時、てっちゃんてやきもち焼きだったのね。
あの子がどれだけ愛されてるか分かった気がするわって言ったお母さんの言葉に、僕はまた笑った。
まったく、その通りだなって思って。
それから暫くしたら一人でてつやが病室に帰ってきて、やっと産まれたと言って泣いた。
その姿にまた笑ってしまう。
今日一日で色んな感情と表情が常に入れ替わり、なんだかとても忙しかった。
だけどどこか気持ちは充実していて、僕の中に大切な何かを残してくれたように思う。
こんな貴重な経験ができたことを、Aちゃんにそしててつやに感謝しなくちゃいけないな…
「で、なんでまだ虫さんいるの？」
ティッシュで鼻をかみながらてつやが僕に向かってそう言った。
前言撤回だ、てつやに感謝はヤメた。
「いいだろ。ここまできたら乗りかかった船じゃないけど、最後まで見届けたかったんだ」
「じゃあいいぞ、もう帰って。無事産まれたし。あ、俺そっくりで超かわいいぞ息子」
「それは気の毒に…」
「あぁ？なんだとっ⁈」
「てつや、うるさいよ」
僕らが言い争っていた時、丁度Aちゃんが看護士さんに連れられ車椅子で帰って来た。
そして僕を見てにっこり微笑む。
「虫さん、今日は本当にありがとう。無事に赤ちゃん産まれたよ」
「うん、本当に良かった。おめでとうAちゃん、よく頑張ったね」
「うん」
Aちゃんは満面の笑みを浮かべながら頷く。
なんだか僕達の間には妙な連帯感みたいなものが生まれていて、うまく説明できないとは思うけど二人だけの絆すら感じた。
Aちゃんと僕の雰囲気がどうやら気に入らないてつやがむっとした表情で口を挟んでくる。
「なんだよ、二人でなんかいい感じになってんじゃねーよ！」
「てつや、何その態度は。虫さんには今回本当にお世話になったんだよ！陣痛で苦しい時にすごい励ましてくれたんだから、お礼言いなよ」
「はぁ？本来なら俺が励ます筈だったんだぞっ、それをいいとこ取りで虫にその役かっ拐われた俺はどうなる？」
「しょうがないでしょ、あんたタイミング悪くいなかったんだから」
「それは俺のせいなのかっ⁈」
「ほんとね。てっちゃん、Aのことになるとこんなにムキになるのね…」
「はい、分かって頂けましたか？」
「え、なんのこと？」
僕とお母さんが笑っているのを、Aちゃんとてつやはお互い顔を見合わせながら不思議がっていた。
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かえで(プロフ) - 七海さん» ありがとうございます。ついざわくん絡みの話を書きたくなってしまいますw更新頑張ります！ (2018年4月25日 15時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - ざわくんを想うヒロインの気持ちがいつも繊細でとても感情移入して読んでます。これからも更新楽しみにしてます。 (2018年4月24日 17時) (レス) id: ff325b6cef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年2月21日 12時
