いのちのうつわ 2 ページ19
「無理だけは絶対すんなよ？」
「うん、分かってる」
体を離したてつやがそのまま私にキスをした。
それから二人の目が合って、笑い掛けてくるてつやは。
「行ってくる」
そう言って私の頬にそっと触れてから扉を開けて出て行った、その後ろ姿にいってらっしゃいともう一度声を掛けたらゆっくりと扉が閉まる。
ふう、やっと行ったよ。
てつやのいなくなった玄関先で一息ついていると、虫さんがリビングから顔を出した。
「てつや行った？」
「うん、やっと行った」
「やっと、ね」
虫さんが可笑しそうに笑う、釣られて私も笑ってしまったその時。
お腹にズキって少しだけ痛みが走る。
「痛っ…」
顔をしかめて条件反射でお腹を押さえた私の様子に、驚いた顔をして虫さんが駆け寄ってきた。
「どうしたの、Aちゃん。大丈夫？」
「あ、う、うん、大丈夫。ちょっとお腹痛くなったけど一瞬だけだった」
「それまずくない？少し部屋で休んだら？そろそろみんな集まるだろうし、後はやっておくから」
「うん、ごめんね。お言葉に甘えてそうさせてもらう」
そんな私に虫さんは笑顔で頷いてくれた。
最近みんなには甘えてばかりいて本当に申し訳なく思っている。
あともう少し、無理しないよう頑張ろう。
それから部屋に戻ってベッドに横になり様子をみることにした。
そうしたらなんとなくお腹の痛みと張りが数分置きにやってくるようになっていて。
時計で時間を計ってみると気づけば10分間隔にまでなっている。
え、これってもしかして…
一気に鼓動が早くなった、だってまだ予定日まで一ヶ月近くあるというのに。
その時何かが下りてくるような感覚と下半身に湿り気を感じて慌ててトイレへと駆け込む。
すると出血と一緒にどうやら破水したようだった。
まずい、本当に陣痛がきたんだ…
さらにお腹の痛みが激しくなって、それは暫くの間動けなくなるほどだった。
どうしよう、こんな時にてつやはいない。
不安が一気に押し寄せて、だけどこうしてる暇はない。
私はなんとかお腹を押さえながらリビングへと辿り着く。
そんな私の姿を見て、テーブルでパソコンに向かっていた虫さんは何か察したようで緊張した面持ちでこちらへ近づいてきた。
「どうしたのAちゃん、やっぱりお腹痛いの？」
「う、うん…どうしよう虫さん、陣痛きちゃった。今破水した」
「え⁉」
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かえで(プロフ) - 七海さん» ありがとうございます。ついざわくん絡みの話を書きたくなってしまいますw更新頑張ります！ (2018年4月25日 15時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - ざわくんを想うヒロインの気持ちがいつも繊細でとても感情移入して読んでます。これからも更新楽しみにしてます。 (2018年4月24日 17時) (レス) id: ff325b6cef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年2月21日 12時
