別れの理由と恋の始まりと ページ24
「Aさん、いきなりな質問で申し訳ないのですが…」
「はい…」
「昔、てつやさんと付き合ってたんですよね？」
「え、なんでそれ…」
「どうして別れちゃったんですか？動画見てる限りやと、二人めちゃめちゃ仲いいから。別れる理由が分からないです」
「…仲よく見えます？」
「はい」
決してそんなことないんだけどなぁって心では思っていた。
てつやとは家が近所で幼馴染の腐れ縁てやつで。
でもいつしかどちらからともなくそういう関係に一度なって、確かに何でも知ってるし気を使わないで済むし楽ではあったけれど…
「あれが恋かって言われたらそうじゃないと思ったんです」
「え、恋…やなかったんですか？」
「あの…お恥ずかしい話、私きっと未だ本気で人を好きになったことがないんだと思います。ほら、恋すると…好き好き！もうあなたした見えないのっ、あなたの為なら死んでもいい！ってなる訳ですよね？」
「まぁ、人によってやとは思いますけど大体はそんな感じになるかと」
「ですよねぇ、そういう気持ちになったことがないんです」
「例えばですよ、Aさん。こう…誰かと一緒にいてドキドキしたってこともないですか？」
「ドキドキ、ですか…？」
「はい」
…そういえばダンス企画中に熱を出して倒れた時、向井さんの掌が私の頬に触れたあの瞬間ドキドキが止まらなかった。
それを思い出したら一瞬で顔が火照っていく。
「あれ、その感じやとあるんですね？」
「ないですないです！」
「それって実は恋の始まりやないんですかね」
ってことはつまり、私は向井さんのこと…
「わ、私が思うに恋したら冷静でいられないと思うんですよね。なんかこう頭で考えるより先に情熱で動いちゃうというか…そういう経験がないんです」
「Aさん」
「はい」
「俺、このままAさんを好きでいてもええですか？」
「は、えっ…？」
「俺の事、好きになってほしいですけど言って好きになるもんちゃうから。せやけど、それでも待っててええですか？Aさんが俺にドキドキしてくれんの」
本当はね、向井さん。
もうとっくにあなたにドキドキしてるんだよ。
今だってびっくりするくらい、真っ直ぐ私を見てくる向井さんに自分のものじゃないくらい心臓がドキドキしっぱなしだ。
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作者名：かえで
| 作成日時：2024年1月7日 11時
