会いに行くよ ページ19
「それでその後、向井くんとはどうなってるんだ？」
「どうって別に…特に何もないけど」
「Aさぁ、いい加減に向井くんの気持ちに答えてやれよ。そんな中途半端な状態じゃ向井くん可哀想だろ？」
「だって相手、超絶人気アイドルだよ？そんな人と付き合うって、勇気もないし自信もない…」
「何言ってんだ！向井くんが折角、好きって言ってくれてんのにこの先こんなビッグチャンスぜってーこねーぞ？」
「そんなことは言われなくても分かってるよ…」
その日の朝、東海の撮影スタジオで作業前にメンバーとテーブルを囲みそんな会話を交わしていた時のことだった。
近くに置いたスマホがLINEの着信を知らせたので何の気なしにそれを見る。
するとまさに今、話しの主役になっていた人からだった。
「えっ⁈」
「どうした、A」
「む、向井さんがこれから岡崎に来るって…」
「あれまぁ…」
「ほらみろ、とうとう向井くん痺れ切らして行動に出ちゃったやん」
「まぁこの機会に覚悟を決めることだな」
「そんなぁ…」
まだ全然、心の準備が出来てないっていうのに。
この数時間後、最寄りの駅に着いたという向井さんを迎えにいった。
改札近くでキョロキョロしていると、どこからか私を呼ぶ高めのキーの声がする。
「Aさーーーん！」
「向井さんっ、声が大きい！」
これじゃあすぐ私達だってバレてしまう。
ただでさえここだと私は見つかりやすいし、それが一緒にいるのが向井さんだなんて分かったらもうそれはある意味事件です！
ダッシュで向井さんに近づき、その腕を取って壁側へと引っ張ると通路に背中を向けるよう指示。
向井さんは分かりましたと素直に私の言うことを聞いてくれるのでまずは一安心。
「Aさん、久しぶり！あー本物やぁ、うれしぃ…」
「いいですか、向井さん。外にいる時は小声で喋ってください？」
「はい、了解です！」
「だからっ、声がデカい‼︎」
「あれ、あそこにいるの東海のAちゃんじゃない？」
「本当だ、一緒にいるイケメン誰？」
「…速攻バレた。向井さん、とにかく速やかにここを離れましょう」
「はーい」
私はとりあえず女の子2人組に手を振ると、急ぎ足で向井さんを連れてその場を去った。
「Aさん、どこ行くんですか？」
「一旦スタジオへ。許可をもらって抜けてきたので」
「そうだったんや。すみません、なんか…」
「いえ、皆、向井さんに会いたがってましたよ」
「えー嬉しっ、俺もです！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かえで
| 作成日時：2024年1月7日 11時
