頬に触れる手 ページ14
「向井さん、雑炊おいしいです。ありがとうございます」
「良かったぁー、まだ食べます？」
「あ、これで大丈夫です」
「ねぇ向井くん、今度岡崎遊びに来なよ」
「ええんですか？ほんまに行きますよ？」
「もちろん、もちろん。なんならAに今回のお礼で市内案内させるから」
「ほんまですかー⁈それはぜひっ！」
…いつの間になんでこんな意気投合してんだろ。
しかも私をだしにしてすっごい盛り上がっちゃってるし。
まぁとりあえずこの3人はこのままにして薬飲んで寝よう。
「向井さん、ごちそうさまでした。すみません私、部屋戻りますね」
「はい、しっかり寝てください」
「ありがとうございます」
「ねぇ向井くん、今日このままここ泊まってかない？」
「えー、ほんまええんですか？」
本気で超仲良くなってるじゃん…
背後でそんな3人のやり取りを聞きながら、色々と考える余力もなく私はリビングを出て自室へと戻った。
それからどれくらい経っただろうか。
爆睡してたのは確かだけど、薬も効いてきたのもあるのかピークで具合が悪かったときに比べればかなり楽になったように思う。
喉乾いたなぁって身体を起こした時、丁度部屋の扉をノックする音。
「はい」
「あ、Aさん。ちょっとだけ入ってもええですか？」
このハイトーンボイスと関西弁は向井さんだ。
私がどうぞと答えるとそっと扉が開いて、おそるおそるといった感じに向井さんが部屋に入ってきた。
「これ、水です。具合どうですか？」
「あ、ありがとうございます。ちょうど喉乾いたなぁって思ってて、助かります。体調も大分落ち着きました」
「いやぁそれはほんま良かったです」
本当に良かったぁって顔をして笑う向井さんを見て私もつられて笑う。
すると向井さんが私の側で不意に屈むと、こちらへと手を伸ばしてきた。
その大きな手が私の頬に触れる。
「あーほんまに熱下がったみたいですね」
「は、はい…どうも…ご心配おかけしまして…」
「でも無理したらあかんですよ！ゆっくり休んでください」
「…はい」
頬に触れてる掌にドキドキが止まらない。
私、どうしちゃったんだろ。
これって、風邪のせい？それとも…
向井さんのせい？
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作者名：かえで
| 作成日時：2024年1月7日 11時
