遠い約束 ページ48
あなたはいつも私にごめんねって言う。
もういいよ。
もうこれ以上、謝らなくてもいいんだよ…
実家へ戻り数週間が経った頃の昼下がり、少し遅めのお昼をキッチンのテーブルでお母さんと一緒にとっていた。
折角のお母さんの手料理も、みっくんに別れを告げた日から全く味がしない。
「ごちそうさま」
「え、もういいの?殆ど食べてないじゃない」
「うん、いらない」
イスから立ち上がり部屋へ行こうとした時、背後からお母さんの声がした。
「本当にいいの?みっくんとのこと」
「…うん」
それに短い返事をしてキッチンを出る。
自室に戻るとベッドへ座ったら、トウコちゃんに会った日の会話が頭の中に浮かんだ。
「私のこと分かる?」
「…ごめんなさい」
「本当に忘れちゃったんだね、そんなこと実際にあるんだ」
「…」
「じゃあはっきり言わせてもらうね。みっくんと別れて」
「え…どうして…」
「私とみっくんは愛し合ってるの。なのにあんたがしつこくみっくんに付き纏ってるから、だからお願い、みっくんをもういい加減に解放してあげて」
私がこうなってしまったから、みっくんは責任を感じて優しくしてくれていただけだったのだと知った。
「もう前のように、みっくんを好きになれないの…だから、ごめんなさい」
本当はそんなこと少しも思ってなんかないのに、でもこうする他どうしようもなかった。
みっくんに嫌われる以外に方法が見つからなかったから。
ごめんね、みっくん。
今までずっと苦しませてしまって、本当にごめんなさい…
伏せていた顔を上げると本棚にあった一冊のアルバムがなんとなく目に留まる。
それを手に取りページをめくるとある一枚の写真に釘付けになった。
幼少の頃の、みっくんと私が顔を見合わせ笑い合う写真。
一緒に収められた四葉のクローバー。
心臓がドクンって大きく揺れて、脳裏に蘇ってきたあの日の記憶は、みっくんと私が今まで歩んできた人生の始まりだった…
「ねぇ、みっくん」
「なに、A」
「大人になったら私のことみっくんのお嫁さんにしてくれる?」
「うん、いいよ」
「ほんと?」
「うん、約束ね」
固く繋いでいた手は離れてしまったけれど、直後二人の小指が絡み合う。
指切りげんまんしたあとで、みっくんが結婚の約束ってくれたクローバー…
「みっくん…」
蘇った大事な記憶に、愛しい人の名前を無意識に囁けば一気に涙が溢れ出した。
one more time→←指輪と離婚届(side TSURIME)
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かえで(プロフ) - まりさん» 私には勿体ないくらいのお言葉を頂き本当に嬉しいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました。 (2019年6月5日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 好きです。この小説を読んでる時間とても充実してました!素敵な時間をありがとうございました! (2019年6月5日 17時) (レス) id: 367abc2ae5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - こーひーまめさん» いつも読んで頂きありがとうございます!最後まで頑張りますのでぜひお付き合いください。 (2019年6月3日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - えだまめさん» 有難いお言葉を本当にありがとうございます!あと少しで最終回を迎えます、最後まで頑張りますのでお付き合いください。 (2019年6月3日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
こーひーまめ - いつも見てます!!続き楽しみに待ってます!更新頑張ってください!!!(o^^o) (2019年6月2日 23時) (レス) id: cfb9147a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2019年4月9日 12時