オムライス（side TSURIME） ページ43
俺と二人で暮らしてほしいと伝えた時、Aが黙ってすぐ頷いてくれたことに安心した。
そしてなによりとても嬉しかった。
これからはAとずっと一緒にいられるってことが。
病院から二人でアパートへ帰って来たけれど、Aは玄関先でモジモジとしたまま中へ入ろうとしない。
「どうしたの？少し休んだ方がいいよ」
「う、うん」
俺に促され、ようやくAはおずおずと部屋の中へ入ると辺りを見回していた。
そして本棚に飾ってあった一枚の写真を手に取る。
それは結婚式の時に撮ったもので、Aがとても大事にしていた写真だった。
「これ…私？」
「そうだよ、俺達の結婚式の時の」
Aは一度俺を見たあとでまた写真をじっと見続けていた。
これをきっかけになにか思い出せるかもとも思ったけど、それはどうやら期待はずれに終わる。
って、そんなに焦ったらダメだよな。
今日退院したばかりなんだ、これから少しずつでも前へ進んでいけたらいいんだ。
気を取り直し、俺はAに笑顔でまた話し掛ける。
「ねぇA、今日の夕ご飯何がいい？」
「えっと…私オムライス作ろうか？」
「えっ⁈」
俺の大好物、覚えててくれたのかと思わずテンションが上がった。
「思い出したのAっ？」
「え、なにを…」
「オムライス！」
俺とは対照的にAは少し驚いた様子できょとんとしながら何度も瞬きをする。
そんな姿を見てきっと今のはたまたま出てきたメニューで、ただの俺の勘違いだったことに気がついた。
Aも俺の様子に申し訳なさそうに俯いてしまう。
「ごめんなさい」
「え、あ、いいんだ！俺の方こそごめん！そうだ、二人で買い物行こうよ、ね？」
「うん…」
初っ端からなにやってんだよ、俺。
変な気を使わせてしまったことを反省しつつ、Aが淹れてくれたコーヒーを飲みながら少し休憩したあとで俺達は買い物へと向かった。
ほんの前まで二人並んで手を繋ぎ、笑顔を交わしながら歩いていた道のりが今はこんなに寂しい。
Aは俺の少し後ろを付いてくるような感じで歩いてる。
この距離感がなんとも切なかった。
するとその時、前方から結構なスピードを出して走ってくる車に気づき、俺はふいにAの手を取った。
「A、あぶないよ。車来た」
「あ…」
庇うようにAの身体を引き寄せると、久しぶりの至近距離に心臓がドキドキした。
こんな感覚がなんだかとても懐かしく感じるのは、結婚したばかりの頃を思い出すから。
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かえで(プロフ) - まりさん» 私には勿体ないくらいのお言葉を頂き本当に嬉しいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました。 (2019年6月5日 17時) (
レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 好きです。この小説を読んでる時間とても充実してました！素敵な時間をありがとうございました！ (2019年6月5日 17時) (レス) id: 367abc2ae5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - こーひーまめさん» いつも読んで頂きありがとうございます！最後まで頑張りますのでぜひお付き合いください。 (2019年6月3日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - えだまめさん» 有難いお言葉を本当にありがとうございます！あと少しで最終回を迎えます、最後まで頑張りますのでお付き合いください。 (2019年6月3日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
こーひーまめ - いつも見てます！！続き楽しみに待ってます！更新頑張ってください！！！(o^^o) (2019年6月2日 23時) (レス) id: cfb9147a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2019年4月9日 12時
