59. あの時 ページ9
そう本当に、虫さんに恋をしたからずっと縛られ続けていたてつやへの思いをうまく浄化することができたのだろうと思う。
結局またてつやに戻ってしまったけれど、でも虫さんがいなかったら素直にてつやのことを受け入れることはできなかったはずだ、きっと。
それまで口を閉ざしていた虫さんが、真剣な表情で顔を上げた。
「Aちゃん、本当は僕も…」
何か言いかけたけれど、またそのまま黙り込んでしまった。
「虫さん？」
「ごめん、なんでもない。ご飯食べちゃおうか、冷めちゃうし」
「あ、うん、そうだね」
なにを言おうとしたのかな、虫さん…
不思議に思いながらもそのまま夕食を終えた。
片付けを済ませてから、てつやの様子を見に部屋の前までやってきた。
「てつや、入ってもいい？」
声を掛けても返事は返ってこなかった。
仕方なくそっとドアを開けて中を覗いてみる。
てつやはベッドの上に無造作に寝転がり、険しい顔で天井の一点を見つめていた。
「どうしたの、てつや。具合い悪いの？」
近づいて尋ねてみても、てつやは黙ったままだった。
私はてつやの額に手をあてて熱でもあるのかと確認してみる。
するとその手を煩わしそうに払い除けられてしまった。
「熱はないね。本当どうしちゃったの、てつや…」
「なんでずっと黙ってた」
「え、なに突然」
「お前、俺のこと好きだったのか？」
「は？だからなによ、いきなり…」
「正直に答えろっ！あの頃…高校の頃、俺のことどう思ってた」
「…好きだったよ、いまさらそれがなに？」
「いまさら？」
私の言葉に怒ったように、それまでベッドに横たわっていたてつやは勢いよく起き上がった。
「いつから俺のこと好きだった？」
「なんなのさっきから、そんなこと聞いてどうするのよ」
「聞かれたことにちゃんと答えろ！」
「そんなの覚えてないよ。もういいでしょ、そんなことよりお腹空いてないの？ご飯取ってあるからあとでまた食べなよ」
本当になんなのよ、突然そんなこと言い出して。
しかもなんだか一方的に怒ってるみたいだし。
ワケが分からないまま部屋を出ようとしたら、てつやから腕を掴まれた。
「なに、まだなにかあるっていうの？」
てつやへ振り返って呆れ気味にそう言ったら、掴んだ手の力が痛いほど強くなった。
「いいわけねーだろ！なんであの時俺に言ってこなかったんだよ、好きだってっ‼」
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かえで(プロフ) - みことさん» 有難いお言葉を頂き本当に光栄です。今後の執筆にとてもやる気がでました！これからの作品もぜひぜひお付き合い下さい。 (2018年2月18日 10時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - こんにちは！完結おめでとうございます！てつやさんオチの作品の中で1番大好きな作品です！これからもかえでさんの作品、楽しみにしてます！(≧ω≦) (2018年2月17日 21時) (レス) id: e05cb40cc5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ゆうきさん» とても励みになるコメントをありがとうございます。2人の子供の話も書いてみようかなと意欲が出ましたw今後も続編考えていきたいと思います。またお付き合いくださいね！ (2018年2月13日 18時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - こんにちは。コメント失礼致します。かえでさんの小説毎日の楽しみとして読んでいました！今回の番外編の更新もめちゃくちゃ嬉しかったです！！！子供生まれたあとのお話も読んでみたいです…(´；ω；｀) (2018年2月13日 15時) (レス) id: bd844e0957 (このIDを非表示/違反報告)
zawa-mina(プロフ) - かえでさん» はい！もちろんです！頑張ってください！ (2018年2月9日 19時) (レス) id: 2d47d3844b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年1月24日 11時
