エイリアンズ Vol.2【東海オンエア】

54. 逃げない ページ4

ご飯も食べ終わり少し寛ぐ。

夕食はとても豪華で驚いてしまった。
はぁ、それにしてもお夕飯おいしかったな。
一緒に頂いたお酒もおいしくて、本当大満足。
少しの間だけどリラックスできたかも。
さてと、じゃあそろそろ…

「お風呂入ろうかなぁ」
「一緒に入るか」
「って、入るわけないでしょ…」

いつもの調子で言い返したのに、てつやの表情はとても真剣なものだった。
ドキっとして私は慌てて視線を逸らしてしまう。
だめだよ、こんなんじゃ。
さっき覚悟決めたんだから、もう逃げないって決めたんだから…

「とりあえず、お風呂は一人で入る」
「…分かった」
「覗かないでよ」
「覗くか！」

なんだか会話までぎこちない。
私は手早く着替えの準備をしてお風呂へと急ぐ。
後ろ手で扉を閉めたらふぅと思わず深く息を吐いてしまった。
今晩、私の心臓は持つだろうか…
なんだか秒間隔で心が揺らぐ。


私が上がったのと同時に今度はてつやがお風呂に向かった。
髪はひとつにまとめて、浴衣を身に着けて。
私はとりあえずベッドに腰を下ろす。
ここに来るまでに、短い間に色んなことがあったな。
ふとどうして私はてつやと一緒に温泉に来てるんだろって不思議な気持ちになってきていた。
なんだろ、今私現実逃避してるのかも…

気づいたらお風呂場の扉が開く音がして、また現実に引き戻される。
顔を上げたらてつやが目の前にいて、私のことを黙ったまま見つめていた。
髪は濡れたまま、少し着崩して身につけてる浴衣が似合っていたし、いつにも増してなんだか男のくせに色っぽかった。
耐えきれなくて下を向いたその時、私はベッドにそのまま押し倒されていた。
枕元にある室内のスイッチを片手で器用に消して、てつやが私を組み敷く。
小さな灯りだけが灯る中、至近距離にはてつやがいる。
私が固く目を瞑った時てつやの唇が重なった。
最初は啄むようなキスが徐々に深くなっていく。
それを何とか受け止めていたら、動きが首筋へ移っていった。
それに思わず私の体が大きく反応する。

「A…」

耳元で囁く声がして、再びそこへ顔を埋められた時。
ある光景が頭の中をフラッシュバックした。

「や、いやっ‼」

気づいた時にはてつやの体を跳ね除けてしまっていた。
突然の私の拒絶に目の前のてつやが驚いているのが分かる。

「A、どうした…？」
「ごめん…ごめんなさい……」

声が掠れる、体の震えが止まらない。

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