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62. 最低 side TETSUYA ページ12

「りょう、悪いが今日泊めてくれ」

今俺はりょうのマンションへ来ている。
深夜近い突然の訪問に、りょうは笑いながらも困惑しているようだった。

「構わないけどどうしたんだよ、何があった」
「Aとケンカした」
「…なるほど、そういうことか」

俺を部屋に通してテーブルにお茶の入ったカップを二つ置くと、りょうが対面に座った。

「…今度こそ本気で嫌われたかもしれん」
「なにをやらかしたんだ、お前」
「A、押し倒して無理矢理やろうとした」
「お前最低だな、そりゃ完璧に嫌われたでしょ」

本当に俺は最低だ。
Aに一番やってはいけないことをした。
大切だとか守るとか調子いいこと言っておいて、結局は俺があいつのことを傷つけてる。
りょうに渋々だが今日あったことを話すことにした。
ずっと黙って俺の話を聞いていたりょうがふぅと一度息を吐く。

「そりゃお前が完全に悪いだろ」
「…だよな」
「昔告ってこなかったこと責めてどうすんだよ。それがいまさら何になるんだ、バカだなぁお前」
「自分でも分かってるわ!…だから余計Aに合わす顔がねぇ…」
「謝れ」
「…どうやって」
「それは自分で考えろよ、とにかく誠心誠意心から謝れ。Aを失いたくないならな」

そうだよな、どう考えても謝るしかないよな。
それしかないことは充分に分かっていた…





翌朝、家に戻るとリビングにまだ虫がいた。
部屋に入ってきた俺を怒った様子で睨んでくる。

「昨夜Aちゃん泣いてたぞ」
「分かってるよ…」
「あんなAちゃん残してどこ行ってたんだ」
「りょうのとこ。悪いって思ってるから帰ってきたんだよ、謝りに…」

その一言を聞いた虫はふっと短いため息を吐いて、俺を真剣な眼差しで見てきた。

「頼むからAちゃん泣かすのだけはやめてくれ、もうあんなAちゃんは見たくない」
「あぁ…」
「なんの為にAちゃんお前に託したと思ってんだ、頼んだぞてつや」
「おぅ、分かってる」

俺はそのままAの部屋の前へ行き、意を決して扉をノックした。

63. 土下座 side TETSUYA→←61. 慟哭



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かえで(プロフ) - みことさん» 有難いお言葉を頂き本当に光栄です。今後の執筆にとてもやる気がでました!これからの作品もぜひぜひお付き合い下さい。 (2018年2月18日 10時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - こんにちは!完結おめでとうございます!てつやさんオチの作品の中で1番大好きな作品です!これからもかえでさんの作品、楽しみにしてます!(≧ω≦) (2018年2月17日 21時) (レス) id: e05cb40cc5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ゆうきさん» とても励みになるコメントをありがとうございます。2人の子供の話も書いてみようかなと意欲が出ましたw今後も続編考えていきたいと思います。またお付き合いくださいね! (2018年2月13日 18時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - こんにちは。コメント失礼致します。かえでさんの小説毎日の楽しみとして読んでいました!今回の番外編の更新もめちゃくちゃ嬉しかったです!!!子供生まれたあとのお話も読んでみたいです…(´;ω;`) (2018年2月13日 15時) (レス) id: bd844e0957 (このIDを非表示/違反報告)
zawa-mina(プロフ) - かえでさん» はい!もちろんです!頑張ってください! (2018年2月9日 19時) (レス) id: 2d47d3844b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かえで | 作成日時:2018年1月24日 11時

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