84. 夢から醒める ページ34
帰り道、てつやの数歩後ろを歩いていた。
今この背中にすがりつけたらどんなに楽になるだろう。
できることなら何もかも私の思いを打ち明けてしまいたかった。
そんな風に考えてしまう自分がなんだかすごく惨めで情けない。
家へと向かう途中、てつやは何度も私の方へ振り返っては大丈夫かと声を掛けてくる。
その優しさが嬉しくて、だけど今の私には痛かった。
「しっかり休めよ、まだ顔色悪いぞ」
「うんありがと、そうする」
お互いの家の前まで来ると私達は向かいあった。
下を向いたままその場から離れない私にてつやはどうした早く行けよと急かす。
言ってしまおうか、いっそ何もかも。
そうしたら本当に楽になれるかな、それとも今以上に苦しい思いを抱えることになるのだろうか。
短い時間の間にぐるぐる色んな思考が脳裏をよぎる。
「どうしたA…」
「てつや、私本当はてつやのことっ」
そう言った瞬間に、てつやの携帯の着信音が私の言葉を遮った。
「あ、あいつからか…いいか、さっさと寝ろよ」
てつやは私にそれだけ言うと、携帯で話しながら家の中へ入っていってしまった。
話の口調から多分相手は女の子からの電話なんだろう…
バカだな、私。
気持ちを伝えたところでどうなるっていうの。
もうこれ以上惨めな思いをするのは耐えられそうもない。
私は溢れる涙もそのまま、その場にずっと立ち尽くしていた。
「A、おいAっ！」
誰かに名前を呼ばれて目が醒めた私は慌てたように飛び起きた。
心臓がすごい速度でドクドクいってる。
呼吸がまったく整わずに、肩を激しく上下させて体内に空気を必死で求めた。
「すげぇうなされてたぞ、どうした。汗びっしょりじゃねーか」
「はぁ…ごめん、ちょっと変な夢見た…」
てつやが私の背中をそっとさすってくれる。
その大きくて温かな手に少しずつ落ち着きを取り戻していく。
どうしていまさらこんな夢見るの。
もう大丈夫だって、あの時のことは過去のことだって割り切ったはずなのに。
なぜなの、今頃こんなに体が震える。
そんな私をてつやが強く抱きしめてきた。
「どうしたんだよ、こんなになる夢ってなんなんだ…」
それに答えることはしたくなかった。
なんて言えばいい、言葉が何もみつからない。
私はただてつやの腕にしがみついて、溢れ出す涙がぽつぽつ下へ落ちていくのを見つめていた。
てつやが優しくそっと髪を撫でてくれる。
その感触に私は瞳を閉じるとその広い胸に頭を預けた。
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かえで(プロフ) - みことさん» 有難いお言葉を頂き本当に光栄です。今後の執筆にとてもやる気がでました！これからの作品もぜひぜひお付き合い下さい。 (2018年2月18日 10時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - こんにちは！完結おめでとうございます！てつやさんオチの作品の中で1番大好きな作品です！これからもかえでさんの作品、楽しみにしてます！(≧ω≦) (2018年2月17日 21時) (レス) id: e05cb40cc5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ゆうきさん» とても励みになるコメントをありがとうございます。2人の子供の話も書いてみようかなと意欲が出ましたw今後も続編考えていきたいと思います。またお付き合いくださいね！ (2018年2月13日 18時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - こんにちは。コメント失礼致します。かえでさんの小説毎日の楽しみとして読んでいました！今回の番外編の更新もめちゃくちゃ嬉しかったです！！！子供生まれたあとのお話も読んでみたいです…(´；ω；｀) (2018年2月13日 15時) (レス) id: bd844e0957 (このIDを非表示/違反報告)
zawa-mina(プロフ) - かえでさん» はい！もちろんです！頑張ってください！ (2018年2月9日 19時) (レス) id: 2d47d3844b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年1月24日 11時
