OPEN SESAME 【東海オンエア】 (ページ9)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:19,792 hit

9. 出会えて良かったページ9

「えいっ、おりゃあ、とうっ！」

としみつさんのお家に戻って来て、物は試しとばかりに私は例の扉に向かって何回も何回も開け閉めを繰り返してみた。

「はぁ、やっぱりダメかぁ…」

何度その扉を開いてみても私の部屋が現れてくれることはなかった。

「Aちゃんさ、そんなことしてたらそのうち壊れるよそれ」

振り返ったらとしみつさんが両手にカップを持って、それをテーブルの上に置くとソファーに腰掛けた。

「まぁとりあえずお茶飲みなよ」
「すいません、ありがとうございます」

お言葉に甘えて私もテーブルの近くに座るとお茶の入った熱々のカップをそっと両手で包み込む。

「困ったなぁ、どうやって帰ろう」
「まぁそんなあせらなくても、もうちょっとゆっくりしてったらいいやん」

真剣に悩む私にお茶をすすりながらとしみつさんがのほほんと言う。
思わず私はとしみつさんをじっと見つめていた。

「いやぁそういうワケにもいかないですよ、としみつさんもご迷惑でしょうし」
「いや、全然」
「いえでも、これ以上ご好意に甘えるワケにもいきませんから」
「…もう少しだけ、一緒にいたい」

としみつさんのそんな一言に心底驚いてしまった。

「えっ？今なんて…」
「知り合ってからそんな時間経ってないのに、こんなこと言ったらAちゃん引くかもしれないけど…正直まだ一緒にいたい」
「としみつさん…」
「Aちゃんで良かった。ありえないような出会いだったけど、こうやってAちゃんと知り合えて本当に良かった」

嬉しかった、としみつさんからそう言って貰えて。
本当に本当に嬉しかった。
不覚にも涙が溢れそうになってしまう。
その時、背後からギィィって何か物音が聞こえた気がして。
としみつさんと私がその音のした方へ顔を向けると、そこには。

「…え」

私は小さく呟いていた。
二人が目にした光景。
それは扉が大きく開いていて、その向こうにあるはずのない私の部屋があった。
としみつさんと私は思わず顔を見合わせていた。
帰れる、これで私は現実の世界へ。
だけどそれは、としみつさんとのお別れを意味していた。