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夜より深い ページ6

探偵社帰り。いつもより仕事が多く、残業して一人残っていた為、帰る時間が遅くなった挙句いつもより身体が重く感じた。
早く家に帰り、風呂に入って体の疲れを癒したいとAは少し近道をする事にした。いつは通らない裏路地を唯ひたすら歩く。細く薄暗くなんだか空気が重く感じた。肌にまとわりつく湿気が煩わしい。
裏路地はポートマフィアが彷徨いている為あまり歩くなと言われているが、まぁ大丈夫だろうとAには珍しく楽観的に考えていた。


「こんばんは。」


不意に声が聞こえて少し驚きながら振り返る。全く気配を感じなかった。
背後には肌の青白い痩躯の男が立っていた。面識はない。露西亜帽子を被っていて、日常とかけ離れたような男の雰囲気にAは薄ら寒い何かを感じた。
こんな時間にこんな所にいることに些か疑問は抱いたものの、Aは少し間を開けて「こんばんは。」と声を返した。
日本人とは異なる彫りの深い顔立ちに外国人であることは予想がついた。


「貴女、武装探偵社の最果Aさんですよね? 」


突然の言葉にAは一瞬言葉に詰まる。


「…初対面でしたよね? 」

「えぇ。貴女のことは新聞で知りました。あの説は大活躍でしたね。」

「そうでしたか。恐れ入ります。」


Aは言い様もない不安感を抱いた。それは言葉にするには些か難しく、目の前の男の瞳、声、雰囲気がAを不安に駆り立てる。


「折り入ってお話がありました。実は僕はある組織の長をしていまして、貴方を勧誘しに来ました。僕なら貴方の望みを叶えることが出来ます。一緒に来ませんか? 」

「……私は貴方を知りません。名前も組織も、何も知りません。そして生憎、今の環境を気に入っています。折角の申し出ですが、貴方とは行けません。」


突然の勧誘に驚いたもののハッキリと男に告げる。すると目の前の男は緩く笑った。


「それは残念です。唯、まだ諦めてはいないとお伝えしておきましょう。また時が来たら迎えに来ます。」


そう云うと男はAに背を向け立ち去ろうとする。だが、何かを思い出したかのように足を止め、振り返った。


「そう云えば僕の名前を云っていなかったですね。フョードル・ドストエフスキーです。以後、お見知りおきを。」


そう告げると闇に溶けるようにその場から消えた。薄ら寒い笑みを残して。
残されたAは言い様のない不安を感じ、家まで人目もはばからず走った。

仮面の暗殺者→←高潔な君


ラッキーアイテム

名探偵のメガネ


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海姫(プロフ) - 神夜さん» コメントありがとうございます!本名と一緒とか…、運命感じます(笑)。ってか可愛い名前ですね。羨ましいです! (2019年1月24日 9時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 海姫っていう名前が私の本名と同じで思わず2度見してしまい気になったので見てみた所とても面白かったです!更新頑張ってください (2019年1月22日 0時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます〜。正直原作沿かなり自信ないんですけどか頑張ります! (2018年12月28日 20時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 続編、良いですね!楽しく更新を御待ちしておりますm(_ _)m  (2018年12月24日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海姫 | 作成日時:2018年12月23日 21時

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