高潔な君 ページ5
布団から出てきたのは涙を目にいっぱいに浮かべ、無精髭を生やした男だった。Aは少し呆気に取られたものの「よろしくお願いします。花袋さん。」と畳の上で美しく正座し腰を曲げ、挨拶する。すると布団の中の花袋は面食らったように涙で濡れた目をぱちぱちとさせていた。
「最果A！」
突然花袋がAの名前と叫ぶと布団から飛び出していく。そして何やら資料を漁ると一枚の新聞を持ってきた。その際に崩れた紙の束と舞った埃に国木田は眉を顰める。
代わってその新聞に心当たりがあったAは「真逆、」と声を漏らした。そして花袋に突きつけられた新聞は、以前切りつけ魔を捉えた時のAの写真だった。
"お手柄武装探偵社！切りつけ魔 可憐な美女にお縄になる！"と"人を愛する権利がみんなにある。"の見出しが些か懐かしく恥ずかしい。
花袋は写真とAを見比べ興奮したように「うんうん！」と頷いている。
「やはりそうだ！写真よりも美しい！！さ、サインをくれまいか！」
その様子に面食らう国木田と敦とA。先程までの泪は何処へやら。国木田が「な、撫子はもういいのか？」と聞くと「過去のことは振り返らない主義なのだ！」と誇らしそうに元気に言葉を返す。その言葉に国木田と敦はなんだかどっと疲れたような気がして肩を落としてため息をついた。
まったく、なんなんだこの男は。
対するAはサインくらいなら、とその新聞記事に名前を書いた。実のところ、サインを求められたことは初めてじゃなくて、恥ずかしく思いながらも何回か書いた経験があった。その様子は一時期報道でも取り上げられ、Aの元には報道番組の出演の依頼が来ていたがそれは丁重にお断りしていた。
「おお！
容姿だけでなく字までも美しいとは！」
「あ、あの、流石に褒め過ぎでは…。」
「A、放っておけ。」
興奮する花袋にAは落ち着かせようとするが国木田の一言で「そうですか。」と動きを止める。当社にも云っても聞かない莫迦はいる。それと同じ扱いにするのもどうかと思ったが、ここは国木田の判断を信じようと思ったのだ。
結果的にAの仕事はそれだけだったのだが、花袋とは一体、という疑問を残して終わる一日だった。
ラッキーアイテム
名探偵のメガネ
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海姫(プロフ) - 神夜さん» コメントありがとうございます！本名と一緒とか…、運命感じます(笑)。ってか可愛い名前ですね。羨ましいです！ (2019年1月24日 9時) (
レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 海姫っていう名前が私の本名と同じで思わず2度見してしまい気になったので見てみた所とても面白かったです！更新頑張ってください (2019年1月22日 0時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます〜。正直原作沿かなり自信ないんですけどか頑張ります！ (2018年12月28日 20時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 続編、良いですね！楽しく更新を御待ちしておりますm(_ _)m (2018年12月24日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海姫 | 作成日時：2018年12月23日 21時
