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スピリチュアルを君に ページ21

Aは目の前で頭を垂れたままピクリとも動かない国木田を見つめる。小さく名前を呼べば肩がピクリと反応した。


「国木田さんは、間違っていませんよ。」

「…何故そう思う。
俺は、社長を見殺しにしようとしているんだぞ。」

「そうだとしても、国木田さんは何かを守ろうとしているんじゃないんですか?」


Aの言葉に少しだけ頭を上げた。だがまだ表情は伺えない。


「何故、乱歩さん達が戦うのか解りますか?」

「…社長を護るためだろう。」

「それだけじゃないんですよ。」


その言葉に国木田は顔を上げた。
Aは国木田を真っ直ぐに見つめていた。


「探偵社だから。」


そう云ってAは少し俯いて微笑んでいた。春一番に咲く梅の花の様に、温かく、少し寂しげに、でも優しく、微笑んでいた。Aの周りから柔らかな暖色が滲んで見えるようだった。
その表情が、美しかった。


「私、実は探偵社員の人はみんな乱暴者だと思っているんです。正義や無辜の民のために一人の悪を傷つけて殺すことを正当化する人達。

そしてその覚悟がある人達の集まり。」


人を救う行為を長年続ければ続けるほど、痛いくらいに知ることになる救えない人々。ある者は泣きながら、ある者は叫びながら、ある者は呪いを吐き捨てて、そしてまたある者はそんなことすら許されず泡の如く死んでいく。
そんな死に対面したことがある人々だからこそ死の重みを然と理解している。
そんな集団で私達は出来ている。


「人によって正義は違います。誰かの正義が誰かを焼き殺す可能性があるように、誰かの悪は誰かの正義なんです。
もし、国木田さんが自分の正義に迷っていたとしても、突き進んでいくしかないんです。私達は常に時間に背中を押されているんですから。」


Aは酷い懈怠感に襲われながらも国木田に近づき、そっと頬に手を寄せた。何かを求めるような幼い瞳がAに向けられる。


「躊躇いながら試しに右に曲がるのも、断固として信じ左に曲がるのも運命は同じ事です。
引き返すことなど出来ないのですから。」


国木田は少し思案した後に、決意したように立ち上がる。もう、国木田は大丈夫だと、Aは思った。そしてふっと笑って「敦さんを呼んできてください。車の外にいます。」と声を掛けます。


「花袋さんにドストエフスキーの情報をお願いしていたはずです。私が送りましょう。

さぁ、立ってください。」


にいっと笑ったAは少し太宰の笑みに似ていた。

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海姫(プロフ) - 神夜さん» コメントありがとうございます!本名と一緒とか…、運命感じます(笑)。ってか可愛い名前ですね。羨ましいです! (2019年1月24日 9時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 海姫っていう名前が私の本名と同じで思わず2度見してしまい気になったので見てみた所とても面白かったです!更新頑張ってください (2019年1月22日 0時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます〜。正直原作沿かなり自信ないんですけどか頑張ります! (2018年12月28日 20時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 続編、良いですね!楽しく更新を御待ちしておりますm(_ _)m  (2018年12月24日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海姫 | 作成日時:2018年12月23日 21時

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