星の海のくじら ページ20
「国木田。お前はどうする? 」
国木田は何も答えない。
葛藤や困惑が国木田を襲っているのが目に見えるようだった。そして国木田は「社長は、街の均衡と平穏を守れと命じられた。黒幕による街の崩壊から人々を守るのが社長のご意思です。」と呟く。なんの答えにもなっていない。そんなの国木田自体もわかっていただろうが、答えなどそう簡単に出せない。これが高潔な人の普通の返答だ。
「なら、規則を破って奴を追うか?」
「然し、規則を破ればまた無辜の民が死ぬ! あの少女のように…。」
ウィルス異能者を追っているときに、幼い少女の命が失われたのだろう。目の前で、また同じ惨事が起きれば国木田はきっともう立つことは出来ないだろう。
壊れかけている国木田に乱歩は声を掛ける。
「お前は探偵社や最も高潔で毅い。だから敵は最初にお前を壊そうとした。
それを忘れるな。」
乱歩はそう云ったのち、Aに向き直る。
「乱歩さん。私は、」
「Aは連れて行かない。」
Aの言葉を遮って乱歩が云った。その言葉に敦が「え!どうして。」と声を上げる。Aは異能者でもあり、体術も長けている。現に国木田との組手は決着がついていないし、あの五代幹部の中原中也とも激戦を繰り広げている。
マフィアと戦うならAの戦力は必ず欲しい。なのに連れて行かないとは、どういう事なのか。
「A、あんた組合の暗殺者の攻撃を受けたね? 」
Aは何も云わない。周知の事だったから。
その言葉に谷崎がハッとして「真逆、」と声を上げる。乱歩は「その真逆だ。」と呟く。
「Aはウィルス異能者の異能を受けている。今のAじゃ足でまといだ。安静にしていろ。」
その言葉に敦達は絶句した。唯一気がついていた与謝野も苦悶の表情を浮かべていた。
Aは唇を噛む。
「……私は動けます。
乱歩さん。異能特務課に再度ドストエフスキーの情報を仰ぎに行ってきます。
皆さんももうご存知でしょう。私は、共喰いの前にドストエフスキーから勧誘を受けています。私の何かが、今回の作戦に不向きになるんです。行かせて下さい。」
Aは真っ直ぐに乱歩を見る。その翡翠色の瞳は透き通っていて光を放っている。
何を云ってもAが引かないのなど、乱歩も分かっていた。
「…無理だと思ったらすぐに異能部屋に匿ってもらうんだぞ。」
「ありがとうございます。」
乱歩はAの頭を撫でた。そして背を向けて車から離れて行った。
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海姫(プロフ) - 神夜さん» コメントありがとうございます!本名と一緒とか…、運命感じます(笑)。ってか可愛い名前ですね。羨ましいです! (2019年1月24日 9時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 海姫っていう名前が私の本名と同じで思わず2度見してしまい気になったので見てみた所とても面白かったです!更新頑張ってください (2019年1月22日 0時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます〜。正直原作沿かなり自信ないんですけどか頑張ります! (2018年12月28日 20時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 続編、良いですね!楽しく更新を御待ちしておりますm(_ _)m (2018年12月24日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海姫 | 作成日時:2018年12月23日 21時