【文スト】空から落ちた薄倖美人３

永遠につづく手紙の最初の一文 ページ36

Aの身体からナイフの切っ先が抜け、谷川の身体傾く。そしてゆっくりとした動きで谷川が地面に倒れた。
Aはその場に留まるものの、白いワンピースから赤い血が滲む。


「誰だ！！」


谷川の背後には顔面蒼白で肩で息をしている三浦が立っていた。赤に染まった手が震えていてその場に立ち竦んだかと思うと、力が抜けたようにへにゃりと地面に座り込んだ。
三浦は涙を浮かべた目で谷川を見つめる。それでも尚、その目には強い光が放たれている。


「 許しません、谷川さん。
貴方は、私たちのすべて。そんな女のために、全てを捨てるなんて、許される行為じゃない。
その女は、最果Aは忘れて、貴方は救済を続けるべきです！！
それなのに、なのに、どうして…。」


どうして庇ったりしたのですか？ という三浦の言葉は空に消えた。その答えは先程ハッキリと聞いてしまった。
彼は彼女を愛してるのだ。
どうにも出来ない現状に三浦の瞳に涙が浮かび、ポロポロと零れていく。しゃくりを上げないのはAの前という小さく残ったプライドだった。
知っていた。今日ハッキリ聞く前から気がついていた。谷川がAを好きでいることなど。そんなことはずっと谷川を見ている三浦だから分かったのだ。
なのに彼はいつも私に優しくする。今だって、谷川を刺したというのに、そんな顔して。


「しをん…。君ももちろん大切です。だけど、Aはそれ以上に大切なんです。だから…申し訳ない。」


仰向けに傷口を抑えながら谷川は三浦に謝罪の言葉を述べた。刺した三浦に、刺された谷川が謝罪する。そんなことを認めたくなかった。A有っての謝罪など要らない。
三浦は必死に「そんなこと、聞きたくない！ 」と声を上げた。そして涙の膜を張った瞳でAを睨む。


「最果A。貴女さえいなければ！！ 私はもっと、もっと谷川さんに見てもらえたのに！」


三浦は落ちていた銃を拾い上げAに構える。Aの翡翠の瞳と目が合う。青白い顔。綺麗な顔立ちの佳人。谷川が愛した人。
それが目の前にあって、それは心優しき人で、誰にでも愛されて。自分との違いを突きつけられているようで余計にやるせなかった。
すぐに気がついて太宰が「やめろ！」と声を張り上げるも、無残にもズガンッ！！と発砲されてしまった。めちゃくちゃに撃たれたそれはAの胸元を撃ち抜く。
その衝撃でAの身体が地面にゆっくりとスローモーションで倒れていくのを全員が見ていた。

世界から落ちる→←今は貴方の膝にもたれ、悪魔が来ないことを祈ってる。

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