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｢とにかく、だ。さっき話したことを意識して試合に臨むといい｣
その言葉で打ち合わせは終わった。
お二人が退室し、取り残された私は膝の上で固く拳を握る。
思い詰めてはならないと言われたばかりなのに、心臓が締め付けられるようなじわじわとした焦燥感に駆られる。
先日教わったのは基礎だけ。
基礎さえわかっていればいいとその時は言われたけれど、経験が皆無の状態で知識だけがあってもそれは重荷にしかならない。
上を向いて大きく息を吸い、ふっと短く吐き出す。
まずは、その基礎を忘れていないか確認しなければ。
ベッドから重い腰を上げて、窓際の机に置いた日記を開く。
この荘園での記録義務であり存在証明のそれ。
荘園主が何を目的に義務としたのかは不明だが、何か意図があっての事だろう。
厚い表紙を開いて、数ページ進む。
各ハンターやサバイバーの特徴、内在人格、そして立ち回りの基本。
それらを綴るあの日の記録を開く。
＊
｢救助の基本はまず、ダウンと同時に移動することだ｣
聖心病院正面ゲート前。腕を組んだサベダーさんが口を開いた。
声音は落ち着いているが、威嚇するようにフードの下で鋭い眼光が瞬く。
｢どうしてですか？｣
｢ハンターは全ての未了暗号機を透視して、解読中のアンテナの揺れでサバイバーがどこにいるかを知ることが出来る。
基本的に、ハンターが揺れを判断する時には立ち止まるんだ。
時間を無駄にせず、確実にハンターがそれをできるのは攻撃硬直中。
チェアに拘束されてから暗号機を離れてみろ、どこから来るか教えているようなものだ。それで起きるのは救助狩り。椅子にすらたどり着かせて貰えないのがオチだ。
見え透いた救助ルートでは救えるものも救えない。それに、直ぐに離れなければタイミングも逃す。
一秒でも他のサバイバーが解読できる時間を稼ぐために、展開を早めないために、救助タイミングは四割と九割が原則だ。
解読中の暗号機に寄せられた時も同じだ。居場所が知られていれば急かされる。機を見計らえ。
救助の失敗は負けと同じと考えろ｣
眼前のロケットチェアに視線を傾けてそう語った彼の横顔は険しく、組まれた腕は力んでいる。
｢でも、あまり気を張りすぎるのも良くないわ。落ち着いて、ハンターの動きをよく見て読み合いをすればいいの。失敗したことがないサバイバーなんて居ないと思うわよ？……ねぇ、サベダーさん？｣
｢……あぁ｣
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セネン@6割の犬1(プロフ) - 優さん» コメントありがとうございます。更新頑張ります。 (2021年4月10日 23時) (
レス) id: 6872dee143 (このIDを非表示/違反報告)
優 - 続き楽しみにしてます！おジョゼ大好き(´∀`) (2021年4月10日 21時) (レス) id: cd76d9f474 (このIDを非表示/違反報告)
セネン@6割の犬1(プロフ) - 令さん» コメントありがとうございます。勝率は飾りとは言いますが負け続けると気分が落ち込んでしまうと思いますのでお気を付けて。描写には気を遣っておりますので大変嬉しく思います。語彙力が無くてこの感謝を伝えきることが出来ませんが、これからもよろしくお願い致します (2020年12月5日 22時) (レス) id: 6872dee143 (このIDを非表示/違反報告)
令(プロフ) - ハスター様の衣装が欲しくて頑張ってランクマに潜ってますが負けばかりが続いております(どうでもいい)。作者様のとても繊細な描写が大好きです。この先の展開を心待ちにしております。お体に気を付けて、御無理をならなぬよう。応援しています。長文失礼致しました。 (2020年12月5日 22時) (レス) id: d48c90db64 (このIDを非表示/違反報告)
セネン@6割の犬1(プロフ) - 氷咲＠氷珀さん» コメントありがとうございます。是非とも沼ってください。沼の先住民として沼る手伝いもします。文才はもっと磨きます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。(語彙力が溶ける音) (2020年11月22日 20時) (レス) id: 6872dee143 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セネン | 作者ホームページ：
作成日時：2020年11月22日 12時
