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story98 いざ、お化け屋敷へ ページ32

陽毬side


あの後少しだけ具合が悪くなって、目を閉じていたら流架と星なしが僕らを追いかけてきたので、再び合流して技術系エリアを歩いていた。

すると星なしがいきなり大きな声を出して、委員長のお化け屋敷行くの忘れてた、なんて言い出した。

正直僕はお化け屋敷なんてところ絶対に行きたくなかった。流架も僕が暗いところと狭いところが嫌いなのを分かっていたため、星なしに見つめられても何とか目を逸らして耐えていた。

だけど星なしは結局パイは食べられなかったわけで、このままではアリス祭の思い出があまりなくて可哀想だと思いそんなに行きたいのなら行けば良いんじゃない、と提案した。

所詮お化け屋敷とは言っても学生が作るレベルだし、お昼だし、大した事はないだろうとたかを括っていた。しかし僕はアリスという者たちをあまりにも舐めていたらしい。


「あ、あれじゃないか?お化け屋敷。」


目の前に佇む古びた洋館は1ヶ月そこらで建てられたとは思えないほどのクオリティだった。
壁には年月の経過によって入ったヒビが至る所に走っており、蔦も張っている。また、空いた空間には大きなヤモリや怪物が引っ付いており、空には雰囲気を出すためか常時電気が走り、雷の音も鳴り響いていた。

一足先にこのお化け屋敷を訪れていたカップルは足だけでなく身体全体を震わせ、滝のような涙を流して走り去って行った。


「ねぇ陽毬……やっぱりやめとこ?俺、一緒に外で待つよ。」

「えええ!?陽毬、お化け屋敷怖いん?じんじんにあんな態度とっとるから怖いもん知らずやと思ってたわ!」

「星なしは僕のこと、化け物か何かだとでも思ってるわけ?」


流架はお化け屋敷を前にして顔を引き攣らせる僕に気付いたのか、心配そうに僕の顔を覗き込んだ。

その後ろで流架の言葉を聞いた星なしが狐につままれたような顔でこちらを眺めている。

よく、本当に恐ろしいのは幽霊より人間だ、なんて表現がされるが僕にとっては逆だ。実体のある人間ならばアリスでどうとでも捻じ伏せられるが、幽霊などの霊体に攻撃する手段を今の僕は持ち合わせていない。それに僕の場合は、幽霊だけが怖いのではなくどうしても暗闇が無理なのだ。昔の、嫌な記憶がフラッシュバックしてしまうから。


このまま流架の提案にのって2人を外で待つのも一つの手だ。できれば僕もそうしたい。それは、棗と星なしを2人きりにすると言うこと。

暗闇への恐怖と嫉妬の感情が心の内でせめぎ合っていた。

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えるふぃ(プロフ) - 名無し67465号さん» 名無し67465号さん、コメントありがとうございます!反応がない中、書き続けるより、こうしてコメントしてくださる方がいるだけで続きを書く気力が湧いてきます!今のところ、3日に1話ペースで書けているので、この調子を保てるように頑張ります(*´ω`*) (6月14日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し67465号(プロフ) - すごく大好きなお話です!!続編待ってます! (6月14日 21時) (レス) @page50 id: 4d7900bf24 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» なるほど、その回想で罰則印が付いていなかったのならこの頃の翼にもありませんね…。ご指摘いただいた部分、修正しておきました。ありがとうございます(*´ω`*) (2020年9月29日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
眞白 - えるふぃさん» コメ返ありがとうございます!Zの時の翼の回想(7巻の39話)だと、中等部の制服を着た翼と要がいるので、その辺りかな?と思います!それがいつの時期なのかは詳しくは描かれていませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 1107d34cbb (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» 眞白さん、読んでくださりありがとうございます!翼の年齢のことすっかり抜け落ちてました。ご指摘すごく助かります。罰則印のことなんですが、勉強不足で申し訳ないのですが、いつごろ着いたかどこで分かるか教えていただけませんか?自分では見つけきれませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えるふぃ | 作成日時:2013年12月2日 10時

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