story88 ほっとけない後輩 ページ21
翼side
久しぶりに顔を見せた陽毬はいつもと様子が違っていた。疲れや辛さを隠すのが上手いこいつが、今日は珍しくそれを隠していなかったのだ。
何かあったってことはすぐに分かった。だから棗を煽って焚き付けてからすぐ、陽毬を人気のないところに連れ出した。こいつの相談を聞くのはもっぱら俺の仕事だったから。
陽毬が吐き出したのは蜜柑への嫉妬の感情。こいつの世界のほとんどは棗や流架という人物で出来ている。それ以外の人間はこいつの世界の住人じゃ無い。棗たちも他の人間と関わらず陽毬とだけ関係を築いていた。だからこそ、こいつには蜜柑が自分の世界に土足で踏み込んできて２人を拐おうとしている悪者に見えて仕方ないのだろう。
その世界に俺が入れていないのが少し寂しいが、俺はあいつらと違って四六時中陽毬と一緒にいることができないからそれも仕方ないと思う。
「いいじゃねぇか、別に最低でも。」
全てを話し終えた陽毬の言葉を肯定しながら、今にも泣き出しそうな顔をしている陽毬の頭を撫でてやると、曇っていた表情が晴れていった。
それにしても人の誰かへの好意には敏感なのに、自分への好意には鈍感な陽毬に少し驚いた。
棗や流架はあんなに分かりやすくこいつへの好意を示しているのに、まるで気付いていないなんて。それどころが２人が蜜柑に好意を寄せていると思い込むなんて。
俺が陽毬を抱き抱えていた時の棗の表情や態度で気付きそうなものを。
「なぁ、陽毬。お前の知ってる棗や流架は、すぐ友達を忘れるような最低な野郎か？」
「ううん……２人はすっごく優しいもん。そんな事、絶対にしない。」
まだ不安なのか大人しく撫でられたままでいる陽毬に問い掛ければ、そいつはすぐ様首を横に振った。
「分かってるじゃねぇか。それでも不安だったら、本人に直接聞いてみればいい。きっと全力で否定されるぜ。」
「そう……だよね。うん、そうだったんだ。」
頭を撫でていた手を止め、今度はぽんぽんとあやす様に軽く叩いてやると、陽毬の顔色はみるみるうちに明るくなっていった。
ありがとう翼、なんて言って笑うそいつはもう、いつもの陽毬だった。
「じゃあちょっくら配置について棗を負かしてやりますか！」
「……逆に負かされて、さっき煽られた分の仕返しをされるのにホワロン５箱かけるよ。」
「おまっ……俺が勝ったら相談手数料もコミで、その５倍もらうかんな！」
随分待たせたから棗、キレてるだろうな。
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えるふぃ(プロフ) - 名無し67465号さん» 名無し67465号さん、コメントありがとうございます！反応がない中、書き続けるより、こうしてコメントしてくださる方がいるだけで続きを書く気力が湧いてきます！今のところ、3日に1話ペースで書けているので、この調子を保てるように頑張ります(*´ω｀*) (6月14日 22時) (
レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し67465号(プロフ) - すごく大好きなお話です！！続編待ってます！ (6月14日 21時) (レス) @page50 id: 4d7900bf24 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» なるほど、その回想で罰則印が付いていなかったのならこの頃の翼にもありませんね…。ご指摘いただいた部分、修正しておきました。ありがとうございます(*´ω｀*) (2020年9月29日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
眞白 - えるふぃさん» コメ返ありがとうございます！Zの時の翼の回想(7巻の39話)だと、中等部の制服を着た翼と要がいるので、その辺りかな？と思います！それがいつの時期なのかは詳しくは描かれていませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 1107d34cbb (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» 眞白さん、読んでくださりありがとうございます！翼の年齢のことすっかり抜け落ちてました。ご指摘すごく助かります。罰則印のことなんですが、勉強不足で申し訳ないのですが、いつごろ着いたかどこで分かるか教えていただけませんか？自分では見つけきれませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるふぃ | 作成日時：2013年12月2日 10時
