story78 一緒に帰ろう ページ3
陽毬side
倉庫からの脱出はなんとか成功したものの、瞬間移動先が悪かったせいで絶体絶命。自慢ではないがこれ以上アリスを使ったら絶対にアリスを暴走させる自信があるからもうお手上げだった。
僕と棗は二人で最後を共にするとして、せめて関係のない星なしだけには逃げてもらおうと声をかけた。
「……なんや、最後って。」
だけど星なしは僕らの言葉を跳ね除けた。見捨てるなんて絶対にできひん、と真剣な顔で。
星なしは言った。流架やナルが、他のみんなが僕らの無事を願って頑張ってるんだと。それなのに諦めるなんて許さないと。
あまりに真剣な表情に、僕も棗も言葉を返せなくなる。学園にいるのは僕らのことをよく思っていない奴らばかりだったから、こんなふうに言ってくれた星なしの言葉が嬉しかった。
「おい、こっちの方で声が聞こえなかったか?」
しかし僕らを励ますための声が大きすぎたのか、すぐ側まで探しにきていた追手に見つかってしまった。
この場所は男たちのいる場所から階段で降りた場所にある。後ろは壁、他に逃げる場所もない。男が下に降りてきたらもうどうすることもできない。
男たちのうちの一人が階段を降りてくる音を聞いた星なしが、床に落ちていた角材を拾い上げた。
「一緒に帰ろう、学園に。みんな、待ってる。」
不安そうな、だけど覚悟を決めた顔で星なしは角材を握りしめた。
それと同時に男が階段を降りきって物陰に隠れる僕らのことを見つけた。そして大声で僕らがここにいることを他の仲間に知らせる。
すぐに仲間が瞬間移動で飛んできて追い込まれる。先に降りてきた一人は、星なしが振り回した角材によって怯んだが、もう一人の男は星なしの持つ角材を受け止め力任せに振り払った。その拍子に星なしの身体は壁に叩きつけられる。星なしをいなした男が、床にへたり込んでいた僕の手を掴み引っ張ったが、僕は痛そうに顔を歪めて頭を押さえる星なしから目が離せなかった。
関係ない僕たちのために危険を冒して追いかけてきてくれた、絶対に死なせないと一人で大人に立ち向かった彼女が苦しんでる。
「……てめぇ、てめぇ!!」
同じく棗も星なしの姿を見て怒りを露わにした。その開ききった瞳孔を見て彼の行動を悟った。自分を結界の中に含めようとすれば、腕を掴んでいる男も守ってしまう。だから僕は咄嗟に星なしと棗を守るように結界を張る。
次の瞬間、耳を劈くような爆音と身を焦がすような熱風が身体を襲った。
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えるふぃ(プロフ) - 名無し67465号さん» 名無し67465号さん、コメントありがとうございます!反応がない中、書き続けるより、こうしてコメントしてくださる方がいるだけで続きを書く気力が湧いてきます!今のところ、3日に1話ペースで書けているので、この調子を保てるように頑張ります(*´ω`*) (6月14日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し67465号(プロフ) - すごく大好きなお話です!!続編待ってます! (6月14日 21時) (レス) @page50 id: 4d7900bf24 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» なるほど、その回想で罰則印が付いていなかったのならこの頃の翼にもありませんね…。ご指摘いただいた部分、修正しておきました。ありがとうございます(*´ω`*) (2020年9月29日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
眞白 - えるふぃさん» コメ返ありがとうございます!Zの時の翼の回想(7巻の39話)だと、中等部の制服を着た翼と要がいるので、その辺りかな?と思います!それがいつの時期なのかは詳しくは描かれていませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 1107d34cbb (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» 眞白さん、読んでくださりありがとうございます!翼の年齢のことすっかり抜け落ちてました。ご指摘すごく助かります。罰則印のことなんですが、勉強不足で申し訳ないのですが、いつごろ着いたかどこで分かるか教えていただけませんか?自分では見つけきれませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるふぃ | 作成日時:2013年12月2日 10時