sidestory3 掴めない奴 ページ16
陽毬side
僕の、というか『白猫』の噂はやっぱり学園全体に広がっていたみたい。
なら、何故こいつは僕を怖がらないんだろうか。
普通の人なら、危力系だと聞いただけで怖がって逃げ出すのに。
普通じゃない安藤の行動がどうしても理解できなくて、自分から話しかける。
「あのさ……怖くないの?噂、知ってるでしょ?」
こんなこと聞いても返ってくる答えが温かい言葉のわけがないのに。
「噂?あぁ、あれか。怖くないな。まず、信じてないし。」
なんて思ってたけど安藤の態度は変わらず明るくて、更に疑問が募るばかり。
何処か遠くの方を見て話す安藤の横顔をじっと見つめていると視線に気づいたのか、彼は僕の方に顔を向けた。
僕を見た安藤がちょっと肩を竦めて、苦笑いしたから、もしかしたら睨んでいるように見えたのかもしれない。
「チビもさ、大変だな。」
その表情のまま安藤は言葉を紡ぐ。「何が」と僕が聞き返すよりも速く、彼は次の言葉を発した。
「ワケわかんねー噂たてられてさ。
噂ってのは大概がなんの信憑性もないものなのに。」
彼が、何を思ってそんなことを言ったのかは分からない。
ただ一つだけ、僕がかろうじて理解できたのは、彼が嘘を付いているってことだ。
その嘘が、どの発言に対してなのかは分からないけど。
そんな根も葉もない噂なら、学園中に噂が広まったりしないって、目の前にいるコイツも知ってるはずだから。
「なぁ、さっき聞きそびれた名前だけど、今なら教えてくれっか?」
「……陽毬だよ。天野陽毬。」
「へぇ、いい名前じゃん」
中庭にサボりに来たときはあんなに煩く感じた蝉の声も、鬱陶しかった暑さも、安藤に遭遇したときの嫌悪感も、もう何も気にならなくなっていた。
安藤にすっかり毒気を抜かれてしまったみたい。
「じゃあチビ……じゃなかった、陽毬もそりゃあ、あんなの広まってたら教室にも居づらいわな。」
安藤はうーん、と悩む素振りを見せながら頭を少し掻いた。出会ったばかりの僕に此処までして、彼の利益になることなんてないだろうに。
「じゃあ、俺たちの教室に来いよ。」
「は?え、何……言ってるの?」
「サボってるし暇だろ?よし、決まりな!」
彼が再び口を開くと重い空気が一変した。そして反論する間もなく、僕は安藤に担がれるようにして初等部の校舎とは違う方向に連れていかれる。
やっぱり……今日は厄日なのかもしれない。
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えるふぃ(プロフ) - 名無し67465号さん» 名無し67465号さん、コメントありがとうございます!反応がない中、書き続けるより、こうしてコメントしてくださる方がいるだけで続きを書く気力が湧いてきます!今のところ、3日に1話ペースで書けているので、この調子を保てるように頑張ります(*´ω`*) (6月14日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し67465号(プロフ) - すごく大好きなお話です!!続編待ってます! (6月14日 21時) (レス) @page50 id: 4d7900bf24 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» なるほど、その回想で罰則印が付いていなかったのならこの頃の翼にもありませんね…。ご指摘いただいた部分、修正しておきました。ありがとうございます(*´ω`*) (2020年9月29日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
眞白 - えるふぃさん» コメ返ありがとうございます!Zの時の翼の回想(7巻の39話)だと、中等部の制服を着た翼と要がいるので、その辺りかな?と思います!それがいつの時期なのかは詳しくは描かれていませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 1107d34cbb (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 眞白さん» 眞白さん、読んでくださりありがとうございます!翼の年齢のことすっかり抜け落ちてました。ご指摘すごく助かります。罰則印のことなんですが、勉強不足で申し訳ないのですが、いつごろ着いたかどこで分かるか教えていただけませんか?自分では見つけきれませんでした… (2020年9月29日 21時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるふぃ | 作成日時:2013年12月2日 10時