だから、嫌いなんだよ。～彼がついた２つ嘘～Ⅰ～SJ～ (ページ9)

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落ちたメガネページ9

「あれ・・・メガネ」

ない・・・ないっ！

すると彼は、「ふっ」っ鼻で笑うと何かをつかみあげ、私の前にかざした
。
楕円形のガラス二つを目の前に、近づけられやっとそれが自分のメガネなのだと気づく。

「ありが・・・・」

手を差出し、「ありがとう」というお礼を言い終わる前に、

彼は、意味深な笑顔をみせ、目の前からメガネを上にヒョイッとずらした。

「あの・・・？」

返してくれないの？という意味を込めて問いかける。
キュヒョンくんは少し黙り込み、
じーっと私の顔を擬視した。

「あ、あのー・・・・」

もう一度声をかける。

すると、彼の口から飛び出してきたのは、

思いもよらない一言だった。

「メガネ無いほうが可愛いのに。コンタクトにしないの？」

はぁぁ？カワイイ？？よく言うよ。

でも、その言葉で、顔が熱くなり、真っ赤になってることは自分でもわかった。

だって、スカート丈だって長いし、真っ黒な髪におさげ頭。
化粧だってもちろんしない。
・・・・・さすが人気者。そりゃあね、周りの人が集まるはずだよ。

だって、明らかなお世辞だってわかっていても・・・・うれしいもん。

それに・・・

―「大丈夫？A」

゛娘゛以外で呼ばれたのは、久しぶり。
私に対して、ちゃんと声をかけてもらったのも久しぶりだから・・・・・。

だからこんなに顔が熱いの？

人気があるのもわかる。彼がいい人なのもわかる。

だからこそ、やっぱりわたしはキュヒョンくんには近づきたくない。

私の汚い心。醜い気持ちが、浮き彫りになる。

・・・・思い知らされるから。

手に持っていた教科書を両腕でギュッと抱きしめ、唇をかんだ。

とっくに理科室に移動したはずだったキュヒョンくんが、教室の小さな窓から、
その様子を見ていた。
いつもの明るい表情からは考えられないような、無表情で・・・。
床に目を落としていた私は、その目線に気付かなかったけれど・・・。