59. 頑張ってる -side Yellow- ページ10
-side Yellow-
ミルクティを飲み切って、冷えた体が少し温まったところで"お風呂が沸きました。"と女性の声が聞こえた。
『お風呂沸いたみたいだし入ってきたら?』
と勧めてくれたAちゃんの言葉に頷く。
「そうする。」
お風呂のドアを開けると、お気に入りの入浴剤がふわっと香る。
ゆっくり湯船に浸かって、身体と共に心もじんわり溶かされる様な感じがした。
お風呂から上がってリビングに戻ると、Aちゃんと目が合った。
『こっち来て。この前のお礼。』
ドライヤーを持ったAちゃんがソファの隣をポンポンって叩いている。
「自分でやるよ?」
と言ったけど、首を横に振られる。
Aちゃんの意思は固そうだ。
『優吾くん、いつも頑張ってるから。
たまには甘やかしたいんだけど、だめ?』
"頑張ってる"という言葉に心がすっと軽くなった。
「ずりぃ。
そんな風に聞かれたらだめって言えねぇじゃん。」
記憶ないのに、なんでこんなにあざといんだろうって時々不思議に思う。
『ほら、後ろ向いて。』
はやくって急かされる。
「じゃあ、お願い。」
と応えてAちゃんに背を向けた。
後ろでスイッチを入れる音がして、ドライヤーの温かい風が髪を揺らす。
地肌に軽く触れるAちゃんの指が優しくてふわふわしてくる。
眠気に抗えなくて船を漕いでしまう。
Aちゃんが楽しそうにふふって笑うのが聞こえた。
ドライヤーの音がうるさいはずなのに、どんどん瞼が重くなってふわふわする。
『優吾くん、終わったよ。』
Aちゃんに優しく声をかけられて、意識がはっきりしてくると空腹に気がついた。
「……腹減ったぁ。」
ぽつりと零れた。
『ん、よかった。じゃあ食べよっか。』
と言ってAちゃんが立ち上がる。
「Aちゃん、ありがとね。」
感謝を伝えると、Aちゃんが満足そうに笑った。
Aちゃんに支えられながら、多忙な日々を過ごしていった。
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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時