検索窓
今日:17 hit、昨日:6 hit、合計:18,338 hit

58. ミルクティー -side Yellow- ページ9

-side Yellow-

そんな風に日々を大切に過ごしていると、あっという間にツアーが始まるまで一ヶ月を切った。
なかなかの忙しさだ。

神経をすり減らす様な仕事が立て込むとメンタルが不安定になる。
いつもはすぐ切り替えられるような失敗を引きずったり、とっくに乗り越えたコンプレックスが目についたりしてしまう。

もっとこうすれば良かった。
なんであの時出来なかったんだろう。
俺がみんなの足引っ張ってる。

そんなどうしようもない考えが頭の中をぐるぐるする。



切り替えられなくて、気分が落ち込んだまま家に着いてしまった。
ふーっと息を吐いてドアを開ける。

『おかえり。』

ふわっと柔らかい笑みを浮かべたAちゃんが迎えてくれた。

「ただいま。」

いつも通り返事したつもりだったけど、Aちゃんにちょっと不審そうな顔をされた。

『……ご飯食べられる?』

一息置いていつもは聞かれないことを聞かれた。

「食欲ない、かも。」

隠しても仕方ないから素直に言った。
何かあったの?とは聞かれなかった。

『そっか。
 じゃあ、ミルクティーでも飲まない?』

珍しい提案に驚いたけど、魅力的に感じてこくんと頷いた。

ソファで待っててと言ったAちゃんがキッチンに行く。
静かな部屋にお湯を沸かす音、茶葉を出すカサカサって音、食器を取り出す音、Aちゃんの小さな足音が心地よく響く。

聞こえてくる音に耳を傾けてぼーっとしていると、Aちゃんがマグカップを二つ持ってきてくれた。

『はい。はちみつ入り。』

愛用しているハリネズミが描かれたマグカップを渡される。
マグカップからほかほかの白い湯気が上がっているのが見える。

「ありがと。」

お礼を言って受け取ったマグカップが冷えた手をじんわり温める。
甘い香りが漂ってきて食欲を少し刺激した。

隣に座ったAちゃんがペンギンのマグカップをふうふうして一口飲んで、おいしいってぽつりと呟いた。

Aちゃんに続いてミルクティーに口をつける。
温かさと甘さが身に染みる。

Aちゃんも俺も無言でミルクティーを飲んだ。
ただ隣にいるだけなのになんでこんなに心が救われるんだろう。

59. 頑張ってる -side Yellow-→←57. かけがえない日々 -side Yellow-



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
234人がお気に入り
設定タグ:高地優吾 , SixTONES
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。