54. 発覚 -side Yellow- ページ5
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いつもの様に目覚めると、隣に眠るAちゃんと目があった。
「……え、起きてる?」
信じられなくて変な質問をしちゃった。
『うん。起きてる。おはよ。』
と言ったAちゃんが困った様に笑った。
「あ、おはよう。」
条件反射で挨拶を返してから、はっと気づいて体を起こす。
「ちょっと待って。
ごめん。気持ち悪いよね?」
とりあえず出るね、と言ってすぐにベッドから出ようとAちゃんに背を向けた。
『優吾くん。』
Aちゃんに呼ばれて、ベッドの端に座った状態で止まる。
どんな顔して説明したらいいのか分からなくて背を向けたままで振り返れない。
『優吾くん、聞いて。』
体を起こしたAちゃんの落ち着いた声で、混乱していた頭がすっと冷静になった。
「あ、うん。」
何を言われるんだろう。
Aちゃんの言葉を待つ一瞬がすごく長く感じた。
『全然気持ち悪くないよ。大丈夫。
むしろ安心感あった。』
「え?」
想像していたのと真逆の言葉に驚いて、思わず振り向いた。
Aちゃんと目が合う。
『ただ、どうしてこうなってるか聞いてもいい?』
真っ直ぐな眼差しで俺を見ている。
「そうだよね。えっと……。」
どう説明すればいいのか難しくて、言葉に詰まった。
Aちゃんが隣に移動してきて、二人でベッドの端に並んで座る。
「Aちゃんね、実は夢遊病なんだ。」
『……夢遊病。』
ショックを受けた様子のAちゃんが、ぽつりと呟いた。
「初めてうちに来た日、夜11時頃に眠ったはずのAちゃんがリビングまで歩いてきた。
それで俺が手を引いてベッドまで一緒に戻ったんだけど、ベッドについても手を離せなくて。
そのまま、ごめん、手を繋いで一緒に眠った。
それが何日か続いて。
よく分からないけど手を繋いでると、夢遊病の症状は出ないみたいで。
だから、歩いてきたAちゃんと一緒に眠って、眠る時間が早い日は夢遊病で歩く前に一緒に眠るようになった。」
真剣に話を聞いていたAちゃんが深く頷いた。
『……そうだったんだ。
ずっと守ってくれたんだね。
ありがとう。』
と言ってふわっと笑った。
「ごめん、早く言えばよかった。」
と謝るけど、Aちゃんは首を横に振る。
『ううん、言いづらかったでしょ?』
じゃあ朝ごはん食べよって微笑んだAちゃんに続いて部屋を出た。
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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時