エンゼルランプ vol.2 (ページ33)

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82. さざなみ -side Green- ページ33

-side Green-

Aちゃんが居なくなって、高地はから元気。
心配掛けないようにっていつも通り笑顔を作ってるつもりだろうけど、たぶん眠れてないし、少し痩せた。

メンバーはみんな何て声をかけようか迷っているみたいだった。

グループの共有スケジュールを開くと、今日は俺と高地がオフ。
高地を一人にしたくなくて、電話をかけたけど繋がらなかった。

高地が行きそうなところで思い浮かんだのは一ヶ所だけ。
ダメ元でバイクを走らせる。

「あ、ビンゴ。」

高地と前に話した穴場の海岸。
堤防に座ってぼーっと水平線を眺める高地の後ろ姿が見えた。
高地のバイクの隣に自分のバイクを停める。

「え、慎太郎？」

振り返った高地が驚いて目を丸くした。

「隣座っていい？」

返事を待たず堤防に登る。

「え、いいけど、なんでここが分かったの？」

「だって、Aちゃんと行ってきたって嬉しそうに報告くれたじゃん。」

言ってから、Aちゃんの名前を出すべきじゃなかったって思った。
案の定顔を曇らせた高地は水平線の方を向いた。

「……慎太郎。
　Aちゃんさ、記憶が戻って居なくなっちゃった。」

何て言おうか迷って、何も言えなかった。

「ほんとに居なくなっちゃったんだ。」

高地は消え入りそうな声で自分に言い聞かせてるみたいに言った。

「俺さ、受け入れられなくて。
　Aちゃんのいない毎日が長い夢だって心のどこかで期待してた。」

そう言った高地が自嘲するように薄く笑った。

「でも、ちゃんと現実を受け入れなきゃだめだよな。」

真っ直ぐ海を見つめる高地の切ない表情に、やっぱり何にも言えなくてただ見てるしか出来なかった。
高地がこっちを見て驚く。

「なんで慎太郎が泣きそうになってんだよ。」

「だって……。」

聞こえてきた自分の声は思った以上に鼻声だった。

「ありがとう。話聞いてくれて。
　
　時間かかると思うけど、ちゃんと現実を受け入れたい。
　そう思えたの、慎太郎たちがいるからだよ。」

そのまま二人でしばらく海を眺めて、ラーメンを食べて帰った。
仕事現場以外では食べれてないんだろうなって感じてたから、食べる高地を見て少しだけ安心した。