エンゼルランプ vol.2 (ページ31)

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80. 隣 -side Red- ページ31

-side Red-

ドームツアー後、少しの休暇を挟んで初めて6人が揃った。
音楽番組の収録で待ち時間が長め。
楽屋に6人、それぞれがマイペースに時間を過ごしてる。

暇を持て余して、楽屋の端っこに座るコーチにちょっかいを出しに行く。

「コーチー！」

そこそこの大きな声が出たはずけど、コーチは無反応だった。

「コーチ？」

顔を覗くと、ぼーっとしてたコーチがオレに気がついた。

「ん、ああ、ごめん。」

「なんか元気ないじゃん。一発芸やる？」

コーチはふって笑って首を振ったけど、やっぱり元気なさそうに見える。

「ありがとうジェシー。
　でもいいよ、一発芸は。」

ふーってコーチが長く息を吐いてから、言った。

「Aちゃんの記憶が戻ったんだ。
　ただ、代わりに記憶喪失だったこの数ヶ月を忘れちゃったみたい。
　それで本当の、家に帰ったんだよ。」

だからちょっと寂しいだけって言ってコーチが困った顔で笑った。

楽屋にいた他の4人にも聞こえてたみたいで、えっとかはっとか言葉になってない誰かの声が聞こえた。
みんなコーチを見てるけど、なんて声をかけたらいいのか分かんねえのかなんも言わない。
俺もなんも言えなくて、ただコーチの隣にピタッとくっついて座った。

コーチは収録が始まればいつも以上にスマイルで、たぶん俺ら以外でコーチの不調に気づいた人はいないんじゃない？
わかんねぇけど。