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72. ツーリング -side Yellow- ページ23

-side Yellow-

お昼ごはんを食べ終えて、食後の休憩中。
ソファの定位置で読書に耽るAちゃんに声をかける。

「ねぇ、Aちゃん。」

『なあに?』

文庫本から顔を上げたAちゃんと目があった。

「せっかくだしどっか行かない?」

ふたりそろって丸一日お休みだしと思って声をかけた。

『え?』

「ん?」

Aちゃんの驚いた様子にこっちがびっくりして聞き返した。

『ううん。
 勝手に今日は家でのんびりするのかなって思ってたから。』

首を振ったAちゃんがそう言った。
出かけるのが嫌な訳じゃなさそうでほっとする。

「十分ゆっくりしたし、ふたりでちょっと出かけよ。
 行きたいとこある?」

そう聞くと、Aちゃんがうーんと少し考えてから口を開く。

『あ、じゃあバイク乗りたい。』

Aちゃんの言葉が嬉しくて、テンションが上がる。

「いいね。
 そういえば、この前いい場所聞いたわ。」

Aちゃん絶対喜ぶだろうなって想像して少しにやける。

『どこ?』

興味深々の様子でAちゃんに聞かれたけど、リアクションが楽しみだからサプライズにしたい。

「教えない。」

と答えれば、Aちゃんが残念そうに声を上げる。

『えー。』

「楽しみにしてて。」

ほら行こうってAちゃんに言えば、もう切り替えられたみたいで楽しみって呟いてご機嫌に準備を始めた。
ふたりの出かける準備が終わって、並んで置かれているヘルメット二つを持って家を出た。



何度かバイト先へ送ったり迎えに行ったりしてるから、Aちゃんバイクの後ろに乗るのも慣れてスムーズ。

Aちゃんにヘルメットを被せて、まず自分がバイクに跨る。

「いいよ。」

『うん。』

声をかけると、頷いたAちゃんが俺の肩に手をかけてバイクに跨った。
肩に置いていた手がお腹にまわって、抱きつかれるような形になる。

何度経験しても、これだけは慣れない。
密着してる所が熱を持って、自分の心臓が大きく打っているのが分かる。
心がむずむずしてつい口元が弛んでしまう。

「しっかり捕まっててね。」

『はーい。』

お腹の前で繋いだAちゃんの両手にきゅっと力が入ったのが分かる。
いつも通り左手でぽんぽんってバイクに行くよって合図をする。

「じゃあ、行くよ〜。」

Aちゃんに声をかけて、エンジンを掛ける。
バイクは目的地に向けてゆっくりと走り出した。

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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時

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