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71. ふたり -side Yellow- ページ22

-side Yellow-

京セラドーム大阪と東京ドームの追加公演も含めて全ての公演をやり切った。
長年お世話になってるテレビ番組の収録だけはあるけど、数日の休暇をもらった。



ふっと目が覚めてカーテンをずらせば、隙間から朝焼けの空が見える。
まだ早朝みたいだし、二度寝しちゃおうかな。

隣を見ればまだ夢の中のAちゃん。
安心した顔で眠るAちゃんは深い寝息を立てている。

手を伸ばして、Aちゃんの目元にかかる髪をそっと流した。
そのまま頬を優しく撫でる。
Aちゃんの口角が僅かに上がった気がした。

今日はAちゃんも予定がない完全なお休みって言ってたはず。
ふたりでのんびり過ごして、夕方に出かけるのどうかな?

なんて考えながら、もう一度眠りに落ちた。



再び目が覚めると、一足先に目覚めていたAちゃんと目があった。

「……A、ちゃん。」

寝起きで頭が働かなくて、ぽろっと名前が溢れた。

『優吾くん、おはよ。』

Aちゃんがふにゃっと笑った。

「ん、おはよ。」

柔らかい朝日がふたりきりの寝室を包んでいる。
ホテルで一人過ごした日々を通して、隣にAちゃんがいるありがたみを強く感じた。
心が満たされているってこんな感じなのかな。
Aちゃんも同じように感じているといいな、なんて思った。



それからふたりで朝ごはんを食べて、各々動き出す。
ずっとやりたいと思ってたキッチン周りの掃除に取り掛かかった。
汚れが落ちてどんどん綺麗になっていく様子が清々しい。

集中して作業すると、時間の流れが速い。
キッチンの掃除がひと段落して、ふーっと一息ついた。

集中していて今まで気がつかなかったけど、バサッ、パンパン、カチャ……洗濯物を干す音に気がついた。
合わせて鼻歌も微かに聞こえてくる。
はっぴいえんどの"風をあつめて"かな?
Aちゃんは無意識かもしれないけど、よく歌ってるんだよね。

鼻歌に釣られてベランダの方に目を向けると、洗濯物を干すAちゃんの後ろ姿が見える。
なんか機嫌がよさげかも。
しばらく鼻歌に耳を傾けながら、ぼーっとAちゃんの後ろ姿を眺めた。

その後もふたりだけの空間で生活音が心地よく響いていた。

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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時

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