52. お菓子 -side Yellow- ページ3
-side Yellow-
しばらくして、売店から樹が帰ってきた。
「高地、これやる。」
ってパンパンなビニール袋を渡された。
「ありがとう。」
お礼を言って袋の中を見ると、飲み物とおにぎりと大量のお菓子。
大好きなお菓子をたくさん入れてくれるのが樹らしくて思わず顔が緩む。
「これ、多すぎだろ。」
思わず笑って言うと、樹は満足そうににやっと口角を上げた。
「じゃあ、俺戻るから。
なんかあったら、絶対連絡して。
とりあえず高地はちゃんと飲んで、ちゃんと食べて、寝ろよ。」
樹が気を遣って態とらしくカッコつけて言った。
病室を出ようと後ろを向いた樹を引き留める。
「樹。」
「ん?」
振り返った樹が眉をくいっと上げた。
「ありがとう。」
と感謝を伝えると、にかって笑って樹が病室を後にした。
その笑顔に元気をもらって、特別お気に入りのお菓子を少し食べた。
冷えた心が溶かされていくような気がした。
それから、どれくらい時間が経ったかわからない。
いつのまにかAちゃんの眠るベッドにもたれるようにして寝てしまったみたいだ。
握ってたAちゃんの左手がピクっと動いた。
慌ててAちゃんの顔を見ると、ゆっくり目が開いた。
「こ……優吾、くん。」
わずかな沈黙の後に、Aちゃんが掠れた声で俺の名前を呼んだ。
返事をしようと口を開く前に、ゆっくり目を閉じてまた眠りについたようだった。
遠藤と伊藤さんに一度目が覚めて再び眠りについたことを伝えた。
遠藤にまだ数時間は眠ったままだろうなと言われたけど、Aちゃんのいない家に帰る気にはなれなくてそのまま病院で一晩過ごすことにした。
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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時