69. 座席表 -side Yellow- ページ20
-side Yellow-
遂に東京ドームの公演が始まる。
トイレから楽屋に戻ると、北斗が一人で何かの紙を真剣に見つめていた。
「北斗?
熱心になに見てんの?」
隣から声を掛けて、北斗の手元にある紙を覗き込む。
「座席表?珍しいじゃん。」
「ん、なんでもない。」
何気ない世間話のつもりだったけど、北斗の表情に違和感を感じた。
「知り合いでも来んの?」
「や、別に。見てただけ。」
すぐに否定されたけど、目線が合わない。
「ほんとは?」
ダメ元で聞いてみると、北斗が観念したように困った顔で口を開く。
「……と、兄のパートナーみたいな人。」
なんか複雑な事情でもあんのかな?
「へー、会ったことあんの?」
「3回だけ。」
思ったより多くて驚く。
「……高地。」
北斗が俺の肩に額をつけてくる。
「え?なに、いきなり。」
戸惑っていると、そのままきゅっと抱きしめられた。
「……北斗ぉ?どしたぁ?」
よく分かんねぇけど、様子が変。
ちっちゃい子を慰めるように北斗の名前を呼んで、頭をぽんぽんしてみる。
抵抗されないってことは対応はこれで合ってるのか?
そのまま何も言えず、ぎゅっと抱きついている北斗に腕を回して今度は北斗の背中をぽんぽんし続けた。
しばらくしてガチャっと楽屋のドアが開いて、続々とメンバーが入ってくる。
「は?お前ら何抱き合ってんの?」
一際大きかったのは先頭で入ってきた樹の声。
樹に続いて入ってきた大我、ジェシー、慎太郎も驚きの声を上げる。
「AHAHA、オレもハグしちゃお。」
と言ったジェシーが北斗と俺を包むようにぎゅっとハグしてくる。
「ずりぃ。俺も。」
と樹もジェシーに続く。
「……じゃあ、俺も。」
と控えめに呟いた大我が続いた。
「俺も!」
と嬉しそうな声を上げた慎太郎が最後に続いた。
楽屋で謎のSixTONES団子ができる。
「あちいって。」
流石に熱気を感じてそう言えば、笑い声が沸いてSixTONES団子はパラパラと解散した。
北斗も元気を取り戻したように見えた。
70. 宝物 -side Yellow-→←68. 君がいるだけで -side Yellow-
234人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時