68. 君がいるだけで -side Yellow- ページ19
-side Yellow-
テレビの収録を巻いて、珍しく30分くらい予定より早く帰宅することができた。
いつも通りドアを開ける。
「ただいま。」
『おかえり。』
いつも通り出迎えてくれたAちゃんに違和感を感じた。
「調子悪い?」
顔色が悪いような気がして聞いてみる。
『え?』
と言ってAちゃんがきょとんとする。
「なんかいつもと違うから。」
『えへへ。』
って笑って誤魔化したAちゃん。
「約束、したでしょ?」
前にした"お互い変に気を遣わないで、相手を頼ること。"という約束を理由に笑いながら聞いた。
『ちょっと怠いだけ。』
Aちゃんのことだから、"ちょっと"じゃないんだろうな、強がってんだろうなって予想がつく。
「そういう時くらい家事サボってよ。」
エプロンを指差しながら言った。
『だって、うどんくらいなら作れると思ったし。
私に出来ることってこれくらいしかないし。
薬も飲んだし。
優吾くんが帰ってくるまで時間あると思って。
自分のことくらい自分でやりたいし。』
「はいはい。」
ああ、なんか不安になってるんだろうなって思って、頭をぽんぽんした。
そのまま手を引いて廊下を歩く。
「ベッド行って寝よ?」
『……やだ。心細いじゃん。』
まあ体調崩してるときは人恋しいよね。
「じゃあソファにする?」
『そうする。』
頷いたAちゃんをソファに寝かせて、毛布を持ってきてかける。
「うどんは、すぐ食べる?」
作るけどと言うと、うーんと少し考えてからAちゃんが口を開く。
『30分くらい休んでから食べたいな。
起こしてくれる?』
「ん、わかった。
他に必要なものとかしてほしいことない?」
『……眠るまで隣にいて。』
Aちゃんは恥ずかしそうに目線を逸らして言った。
「手つなぐ?」
こくっと頷いたAちゃんの手を優しく握る。
『優吾くん、ありがとう。』
そう言ってAちゃんが目を閉じた。
安心したように眠るAちゃんの寝顔を見ながら考える。
家事を手伝ってくれていつもすごく助かってる。
頑張ってる姿にいつも力をもらってる。
でも、休んだって、何もしなくたっていいんだよ。
Aちゃんがただいてくれるだけで心があったかい。
本当はずっと隣にいてほしいって思ってる。
Aちゃんにもそう思ってもらえるくらい居心地のいい居場所にできればいいのに。
そう思いながら眠るAちゃんの頭を優しく撫でた。
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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時