67. 雨の車内 -side Yellow- ページ18
-side Yellow-
マネージャーの車で久しぶりのラジオ収録へ向かう。
いつもはメインで頑張ってくれている樹が体調不良で念の為休養を取ることになって、北斗と二人のラジオだ。
北斗と一緒のラジオはいつぶりかなとぼんやり考える。
「高地。」
隣に座る北斗に呼ばれた。
「なに?」
返事をして右を見れば、真剣な顔の北斗と目があった。
「……高地はさ、恋愛的な意味でAさんのこと好きなの?」
マネージャーの流す音楽にかき消されそうなほど小さな声だった。
そういえば前にも似たようなこと聞かれたなって思った。
その時はジェシーに聞かれたんだっけ。
「恋愛的な意味とは違うかな。
ほっとけないって感じ?」
自分の答えが完全にしっくりきた訳じゃないけど、上手く説明できなかった。
北斗の反応はほとんどなくて、意図が読めない。
ただ何かを考えているように見えた。
「……ずっと一緒にいたいって思う?」
と一息置いてから北斗に聞かれた。
「思う……けど、ずっとは無理なんじゃない?
Aちゃんの記憶が戻ったら、お別れなんだと思う。」
Aちゃんはきっと元の居場所に戻りたいんじゃないかなってずっと感じてた。
「そっか。」
今度は北斗の感情が見えないほどあっさり短い返事が返ってきた。
「え、なに、気持ち悪いんだけど。」
って笑って隣の北斗を見るけど、北斗はぼーっと窓の外を眺めてた。
外には雨が降り始めた。
そのまま30分ほど車は走り続けた。
その間、北斗との会話は一言もなかった。
長い付き合いだし、沈黙なんて気にならない関係のはずなのに、今日はなんだか落ち着かなかった。
でも、声をかけることはできなくて、何度も北斗のほうを見るけど目線は合わなかった。
雨に濡れる街並みをぼーっと眺める北斗の横顔を見て、自分も窓の外に視線を移した。
ラジオが始まればいつもの北斗で、車での会話なんていつの間にか忘れていた。
外には雨が降り続いていた。
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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時