65. 数日ぶりの我が家 -side Yellow- ページ16
-side Yellow-
横浜アリーナの公演をやり切って、数日ぶりに我が家へ帰ってきた。
「Aちゃん、ただいま。」
と声を掛ければ、Aちゃんがパタパタと小走りで玄関まで迎えにきてくれる。
『おかえり、優吾くん。』
ふわっと笑ったAちゃんを見て、胸がぽかぽかする。
我が家に帰ってきた安心感でふっと肩の力が抜けるのを感じた。
「はい、お土産。」
持っていた紙袋をAちゃんに渡す。
『え!ありがとう。』
Aちゃんはびっくりした様子でお土産を見ている。
「それね、ミルフィーユ。
差し入れで貰ったんだけど、めっちゃうまかったよ。
ちょうどいい時間だし、一緒に食べよ。」
時計を見ると、15時を少しすぎたところ。
『嬉しい。お茶入れるね。』
と言ってすぐにAちゃんが紅茶を淹れてくれた。
いただきますって手を合わせてから、ミルフィーユを口に運んだAちゃんを眺める。
『……おいしい。』
噛み締めるような本気の"おいしい"に嬉しくなって思わず笑みが溢れた。
「でしょ?
Aちゃん、絶対好きだと思ったんだよね。」
一緒に暮らしてるとお互いの味の好みも分かってくる。
特に、Aちゃんは感情が顔に出やすいタイプみたいで分かりやすい。
『うん、すっごく好き。』
顔を上げたAちゃんと目があって胸がドキッとした。
その後も、幸せそうに頬張るAちゃんを見て、ツアー先でのお土産を定番にしようと心に決めた。
それから、電話じゃ話し足りなかったツアーのことを話したり、Aちゃんの話を聞いたりしてゆったりした時間を過ごした。
『優吾くん、夜ごはん何がいい?』
聞かれてぱっと頭に浮かんだ。
「Aちゃんのオムライス、食べたい。」
『ん、わかった。』
気合入れよって言ってAちゃんが作ってくれたオムライスを二人でおいしく食べた。
Aちゃんのオムライスは、自分で作ったやつよりずっと美味しい。
材料は同じはずなのに不思議だよね。
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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時