64. テレビ電話 -side Yellow- ページ15
-side Yellow-
寝る支度と明日の朝の準備を整えてベッドに横になる。
Aちゃん、一人で寝られるのかな。
なんておよそ成人女性に向けたと思えない心配が頭に浮かぶ。
暫くしてスマホが鳴り、直ぐに電話を取る。
「Aちゃん?」
『優吾くん、寝る準備終わったよ。
今、ベッド入ったとこ。』
耳元で聞こえる声がちょっとむず痒い。
「テレビ電話にしてもいい?」
『いいよ。』
返事を貰ってすぐに画面を切り替える。
「あ、映った。Aちゃん。」
画面に映るAちゃんに向かって手を振った。
『優吾くん。』
いつものベッドで横になったAちゃんが手を振ってくれる。
「一人で大丈夫?」
『大丈夫だけど、隣に優吾くんいないのちょっとさみしい。』
眉を八の字にして困った顔のAちゃんが控えめに笑う。
「俺も、隣にAちゃんいないの寂しい。」
スマホに写るAちゃんがふわっと笑った。
Aちゃんが隣にいることが、もうとっくに当たり前になっていた。
『明日もイベント?』
スマホから聞こえてくる布の擦れる音でAちゃんが寝返りをうったことが分かる。
「明日は朝から。」
『そっか、頑張って。』
いつもより舌足らずになった口調に眠いんだろうなって感じた。
目もほとんど開いていない。
「ありがとう。」
少しの沈黙があって、Aちゃんがあくびをした。
それを見て移ったのか俺も大きくあくびをする。
名残惜しいけど、明日のためにもそろそろ寝なきゃ。
ぽすっ
電話越しにスマホがベッドに落ちた音が聞こえた。
「Aちゃん?」
小声で名前を呼ぶけど、返事はない。
「……寝ちゃった?」
微かな寝息が聞こえてくる。
よかった。
Aちゃん、眠れたみたい。
ほっとして頬が緩む。
「おやすみ、Aちゃん。」
いつもと同じように声を掛けて電話を切り、目を閉じる。
いつもと違うのはAちゃんが隣にいないことと、手に感じる温もりがないこと。
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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時