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63. 月 -side Yellow- ページ14

-side Yellow-

SixTONESのツアー幕開けとなる横浜アリーナの夜公演。
興奮しすぎて記憶が一部飛んでるけど、ファンとメンバーの盛り上がりが凄かったことは覚えてる。
やっぱりライブ好きだなって改めて強く思った。




ホテルに戻ってスーツケースを開けると、入れたはずのない袋を見つけた。
大好きなお菓子が入ってるのがわかった。

"優吾くん、おつかれさま。A"

と書き置きでよく見慣れた字で書かれている。
パッキング見てた時に忍ばせたのかな。
猫みたいにパッキングの様子を眺めていたAちゃんを思い出して頬が緩んだ。


スマホを取り出して、電話をかける。

「もしもし、Aちゃん?優吾だけど。」

『うん、お仕事おつかれさま。』

電話越しに聞くAちゃんの声は少しほわほわしてる。

「ありがとう。お菓子も嬉しかった。」

手元のお菓子とメッセージを見ながらお礼を伝える。

『驚いた?』

「うん、びっくり。」

ケラケラと嬉しそうに笑うAちゃんの声が聞こえてくる。

「そっちは変わったこととかない?大丈夫?」

『うん、変わりないよ。大丈夫。
 心配してくれてありがとね。』

「よかった。バイトは?」

『今日はお客さん少なめだったかな?
 今は晴れてるけど、昼間は雨降ってたから。』

「そっか。おつかれさま。
 こっちは一日晴れてたみたい。
 今も月がよく見えるよ。」

帰りの車から見えた月を思い出して、カーテンを開けた。
白く輝く月が見える。

『え、そうなんだ。』

月見えるかなと呟いたAちゃんが歩くの音が電話越しに聞こえてくる。
シャッとカーテンを開く音が聞こえた。

『きれい。』

ぽつりと零れた声が電話越しに聞こえる。

「ね、きれいだよね。」

そのまま暫く二人で月を眺めた。



『……優吾くんは?お仕事どうだった?』

と優しい声でAちゃんに聞かれる。

「ん、もう最高だった!」

SixTONESのことはぼかしながら話していく。
お客さんの熱気、メンバーたちの表情、スタッフさんたちとの連携、全体の一体感……。

Aちゃんは相槌を打ちながらじっくり聞いてくれて、ついつい話し過ぎてしまう。
時計を見ると思ったより時間が進んでいた。

「Aちゃん、もう寝る準備した?」

『まだ。』

「じゃあ、寝る準備終わったら電話して。
 俺もあとちょっと準備するから。」

そう言って電話を切った。

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作者名:鞍月すみれ | 作成日時:2023年8月8日 18時

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