エンゼルランプ vol.2 (ページ13)

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62. 出発の朝 -side Yellow- ページ13

-side Yellow-

ふわっと意識が浮上して目が覚めた。
隣を見れば、Aちゃんはまだ夢の中みたい。

起こさない様にこっそり寝顔を眺める。
ゆるく口角が上がってるから幸せな夢でも見てるのかな。

朝日に照らされたAちゃんの頬が柔らかそう。
誘惑に負けてほっぺたに指を伸ばす。
ぷにぷにと軽くつつくと、少しくすぐったそうにAちゃんは顔を背けた。

「……かわいい。」

思わず口から零れた。
そのまま暫くぼーっとAちゃんの寝顔を見守る。

　ピピピッ

アラームが鳴ってAちゃんの眉間に皺が寄った。
何回か瞬きを繰り返して、ぽーっとしているAちゃんに声をかける。

「Aちゃん、おはよ。」

『……おはよ。』

掠れてほとんど聞こえない声で返される。

「朝ごはん何にする？」

『……フレンチトースト。
　漬けておいたから。』

そう言ったAちゃんが起き上がってぐーっと伸びをした。

それから、メイプルシロップをたっぷりかけたフレンチトーストの美味しさを二人で分かち合った。

愛用の大きいスーツケースとともに玄関で振りかえる。
Aちゃんが見送ってくれる。

「暗くなったら出歩かないでね。」

出る前にちゃんと言っておかないとって思って話し出す。

『うん。』

返事をした声がちょっと震えていて、顔も真剣を装ってるけど堪えられず少し笑ってる。
これは"優吾くんの心配性がまた始まった"って思われてんなって感じた。
でも、心配性だと思われても確認しておかないと。

「戸締まりしっかりね。」

『うん。』

と言った声はさっきより震えている。

「面倒でも湯船にしっかり浸かって。」

『うん。』

と頷いたAちゃんの返事の震えが大きくなってほとんど笑ってる。

「何かあったら……。」

どんな事でも電話してって続けようと思ったのに、Aちゃんの声に遮られた。

『電話する。
　ね？もうちゃんと分かってるから。』

「本当に大丈夫？」

『本当に、大丈夫。』

遂に堪えられなくなったようで、あははと笑い声が溢れる。
Aちゃんの笑顔を見て大丈夫だって思えた。

「夜電話するから出てね。」

『ん、わかった。』

「んじゃ、行ってきます。」

と言って手を振ると、Aちゃんも手を振りかえしてくれる。

『行ってらっしゃい。』

ドアが閉まる直前までAちゃんが手を振るのが見えていた。
Aちゃんの満面の笑みに元気を貰って、ツアーへと向かった。