エンゼルランプ vol.1 (ページ6)

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05. 呼び方ページ6

それからほとんど毎日のように高地さんは病室に来てくれた。
不定期な仕事みたいで、来る時間も居られる時間もまちまちだけど、顔を出してくれる。
遠藤先生が気を使ってスマホを渡してくれたから、メッセージのやりとりもできるようになった。

高地さん今日は何の映画見るの?
A季節外れのホーム・アローンです!
高地さん懐かしいな〜
A高地さんの今日のおやつは何ですか?
高地さん今日はうまい棒!
高地さんあとで差し入れするね
Aありがとうございます!

高地さんの差し入れの駄菓子を食べながら、お喋りをする。

「Aちゃん。」

って高地さんが急に距離を詰めるから、ドキッとした。

「……って呼んでいい？」

Aさんだと距離あるから、だめ？って高地さんが首を傾けて言った。

『いいですけど。』

戸惑いながら返事をすると、嬉しそうに笑った高地さんが口を開く。

「Aちゃんも、高地さんってやめない？」

『え？』

思いもよらない提案に戸惑った。

「下の名前がいいな。覚えてる？」

私を見る黒目がキラキラしている。

『……優吾くん？』

ふっと小さく息を吐いて名前を呼ぶ。

「うん。」

って優吾くんが満足気に頷いて続ける。

「あと敬語もやめない？」

『急には無理、かも。』

と言ったら、優吾くんはゆっくりでいいよって言ってふわっと笑った。

しばらくそのままお喋りしてたけど、優吾くんって呼ぶたび、Aちゃんって呼ばれるたびに胸がじんわり温かくなった。