エンゼルランプ vol.1 (ページ49)

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48. 期間限定の幸せ -side Yellow- ページ49

Aちゃんとの暮らしに馴染みすぎて、もうAちゃんが来る前にどう生活していたか思い出せない程だ。

毎朝目が覚めると、隣で眠るAちゃんに「おはよ。」と小声で声をかける。
夢遊病対策で一緒に眠ってしまっているけど、これはまだAちゃんにバレていない。

朝ごはんは大体トーストかおにぎり。
準備をしていると、その物音でAちゃんが起きてくる。
その時のAちゃんは少し眉間に皺を寄せた不機嫌な表情で、髪はあっちこっちにいってる。
そんな感じなのに俺が「おはよ。」と言えば、こくんと頷いて『おはよ。』と返してくれるんだよね。
朝弱いんだろうけど、律儀だよね。

それから、そのままほとんど開いてない目でお見送りに来てくて『行ってらっしゃい。』って言ってふわっと笑うの。
Aちゃんに見送ってもらうだけで、一日頑張れる元気が出るから有難い。

仕事の休憩中や移動中も、何かあるとすぐAちゃんに話そうって頭にメモをする。
チーズが美味しいケータリングを見て、Aちゃんが好きそうって思ったり、面白いハプニングでAちゃんが笑ってくれそうって思ったり。

仕事を終えて帰ると、パタパタって小走りで玄関まで来てくれて『おかえり。』って言ってくれるAちゃん。
なんだか安心感があって、ふっと肩の力が抜けるんだ。

23時頃に夢遊病でぺたぺた歩くAちゃんの手をとって、一緒に眠る。
23時より前に寝る時も手を繋いで寝るのが習慣になってしまった。
いい夢を見てぐっすり眠ってほしいって思いながら、隣のAちゃんに「おやすみ。」って小声で言って目を閉じる。

こんな風に、Aちゃんはもう俺の生活の一部になっていて、もうAちゃんと出会う前の生活が思い出せないほど。
お互いのことなら何でも分かるような気もする。
ただ、Aちゃんも俺も触れようとしない話題がひとつだけある。

それは記憶が戻った後のこと。

俺はAちゃんが記憶を取り戻しても一緒にいたいけど、Aちゃんはきっと元の居場所に戻りたいんじゃないかな？
それを直接聞くのが怖くて、Aちゃんに聞けずにいるんだ。

この幸せな日々は"期間限定の幸せ"。

終わりを意識したくないから、これからも俺から記憶を取り戻した後のことに触れることはないだろう。

でも、終わりがあるって分かってるのに、この幸せな日々が永遠に続くような気もしてた。

終わりから目を背けて。