エンゼルランプ vol.1 (ページ13)

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12. ペンギンのマグページ13

しばらくして、車は大きなショッピングモールに入った。
駐車場に車が停まって降りようとしたら、

「大丈夫だと思うけど、マスクだけしよっか。」

と言われて、マスクを渡された。
確かに、ずっと病院に缶詰だったし免疫力下がってるかもなって思いながら、マスクを着ける。

平日だからか、ショッピングモールのお客さんはまばらだ。
記憶がないから物珍しくて思わず周りをきょろきょろ見てしまう。

「ねぇ、Aちゃん。
　迷子になっちゃうよ。」

隣を歩く優吾くんがくすくす笑いながらこっちを見ている。

『はーい。気をつけます。』

軽く笑って返事をした。

「周り、気になるの？」

『うん、記憶ないからかな？』

そっか、と優吾くんが小声で呟いた。

幾つかの必需品の内、まずは服を買うことにした。
記憶喪失の影響か元々なのか分からないけど、私は服にこだわりがあまりないほうのようだ。

「どんな服がいい？」

『……特にこだわりないかも。』

これといった希望がないことを伝える。

「うーん、じゃあとりあえずデニムとTシャツかな？
　レディースってよく分からないけど。」

じゃあ、これとこれと言って優吾くんが選んだデニムとTシャツを持って、試着室で着替える。

『どうかな？』

試着室の前で待つ優吾くんに声をかけると、

「うん、似合ってる。」

ってふわっと優吾くんが笑うから、胸がじんわり温かくなった。

他にも数点服を買って、生活用品も少し買った。
とは言っても全部優吾くんに出してもらって申し訳ない。
いつかバイトしてお返しすることを決意した。

物はほとんど優吾くんが選んでくれたけど、唯一マグカップだけは自分で選んだ。
ペンギンが描かれたもので、理由は分からないけど無性に惹かれた。