ガラスの靴は一足で。【JW 赤×緑】

#10 ページ10

知ってた。知ってたよ。
大抵こういう時はこうなるって。

「…神ちゃんってお酒弱いんやね」
「せやで。度数低めの出しててんけど」

先に共通の友人がつぶれる、気まずいやつやん。

「まぁしげ送ってあげるんやろ？」
「そりゃな」

一個下の彼は気にすることなくタメで話してくる。
や、別にええんやけど。

「いつもは神ちゃん一人で来てたん？」
「ん。あとはたまに照史と来てたで」
「そっか」

俺が知っているだけでこれやから、もっと王子様候補多いかなと踏んでいたんやけど。
さすがにそんな居らんか。ちょっと安心。

「やー、えらい無防備な寝顔しとるな」

俺らの方向いて、自分の腕を枕に眠る彼。
うっすらと開いた唇が幼さを演出する。

「ほんまに。神ちゃん酒弱いんは知っててんけど、つぶれたんは初めてやわ」

その言葉にそっかと心ない返事をする。
どうしてもその寝顔に惹かれてしまうのは、一目惚れのせいか。

ちょっとだけ。

誰にするでもなく心の中で言い訳して頬を触る。

「柔らか…」

ぽそりと感想を漏らすと、流星は呆れたように言う。

「死ぬほどだらしない顔してんで、自分」
「…自覚はある」

流星は小さく笑って、ブランケットを俺に差し出した。

「神ちゃんにかけてやって」
「おん、ありがと」

イケメンはこんなところまでイケメンなのか。

「きっと神ちゃん起きてたら、きゅんやねって言うわ」
「間違いないな」

一瞬の静寂の後、口を開いたのは流星やった。

「しげは神ちゃんのこと、好きなん？」
「、おん」

逃げるな、王子様候補 俺。

「会ったばっかりやし、正直一目惚れやったけど、でも好き。ずっと隣に居りたくて、触れたくて、ずっと大切にしたい」
「そっか。…ええ奴を好きになったなぁ」

流星は神ちゃんを見つめる。
ほんまに、神ちゃんは魅力的な人や。
やからこそ。

「、流星も…？」
「ん？あぁ、俺はちゃうよ笑」

それを聞いてほっとする。
うん、ライバルは少ない方がいい。

「あ、それと」

流星はくい、と片方の口角を上げる。
どうやらそれは彼の癖らしく、キザな動作も流星の顔面なら嫌味ないほどに似合う。

「一目惚れは相手に心底惹かれる強い魔法がかかってるってこと。もう少し自信持ってもいいんじゃない？」

パチリ、と綺麗なウインク。

「ちょ！お前、著作権！」

神山センセの漫画から台詞を抜粋するな！

#11→←#09

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す