#48 ページ48
2023年6月30日
「着替え終わった？」
「うん、入ってええよ」
ノックの声にそう返す。
付き合って十ヶ月ほどが経ち、家では完全にタメ語。
「似合ってる」
「ふふ、ありがとーございます。…大毅も、いつも以上にかっこいい」
白のタキシードを纏った彼は、照れくさそうに笑った。
見慣れない姿に少しソワソワするのは多分二人とも同じ。
家族と、親しい友人を招いたこじんまりとした会。
それでも誓いの言葉をするから、結婚式と言って差し支えないと思う。
「…俺、大毅の結婚式の友人代表スピーチしたいなって思ってた」
「え？」
「したい…は、ちょっと嘘かもしれへん。けど、大毅が誰かと結婚式を挙げて、嬉しそうな顔してる姿は何度も想像した」
今だから言える話。
あのまま、付き合わないままでいて俺が友人代表の座まで上り詰められたかはわからないけど。
「…どう？想像と比べて」
「想像よりも、だらしない顔してるけど…すごく幸せそう」
「ともがそういう顔にさせてるんやで。幸せ。ともと居れて、すごく幸せ」
大毅は噛み締めるように何度か頷く。
「…ほんまに俺で良かったん？結婚なんて、基本的には一回しかないし…」
「とも“が”良かったの。そりゃ頑固で可愛くないところもあるけど、でもそういうのひっくるめて全部好き」
「……っ、」
「言わせたがりめ。今日くらいは許したるけど」
お揃いの指輪が光る。
それが涙が滲んだせいだと気づいた時には、大毅が頬を拭ってた。
「関係偽って、ともとの距離がどんどん近づいて。意外ところころ変わる表情とか、普段職場じゃしないようなパーソナルな話も、くだらん話も、もっと知りたい、全部独り占めしたいって思うようになった。小心者の意気地なしのくせに、一丁前に独占欲」
泣き止ませようと、大毅があやすように俺の頭を撫でた。
「でもな、やっぱり俺のわがままやねん。ともを30歳独身にしたくなかった」
「んふふ、どんな理由よ」
「笑い事やない。自分がその立場になって、嫌ってほど理解したから。周りが自分以上に年齢も、配偶者の有無も、すごく意識する」
やからな、と大毅は秘密ごとを話すみたいに俺の耳元で囁いた。
「これはとものこと一生愛しますって誓いと、家族の証、それからちょっとだけ虫除け」
そうして薬指をなぞる。
二人お揃いの、プラチナの輪。
俺が自分の気持ちに素直になれる、魔法のかかった結婚指輪。
「とも、俺と結婚してください」
「…1日限定100個のプレミアム生プリンもつきますか？」
「もー！茶化すなや！笑」
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【薬指に魔法をかけて／fin】
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ナナセ(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。完結まで漕ぎつけられたのはあさんを始め、たくさんの方が読んでくださったおかげです！最後までお付き合いいただきありがとうございました☺️ (8月22日 9時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ゆきのさん» コメントありがとうございます。赤さんは途中から💚さんへの気持ちに自覚が出てきたので、だんだん会いたいだけで誘うようになったし、キスもそういうことです🙊 最後までお付き合いいただきありがとうございました！ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - foolさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ありません💦 緑さん可愛いファンクラブ(自称)なので嬉しいですー！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初コメ失礼いたします。完結おめでとうございます！緑くんの恋が実って良かったです😭今回も素敵な作品ありがとうございました！ (8月21日 20時) (レス) id: f17f5e7704 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - もともと緑くんが好きだったから、見えない所でも恋人っぽく振る舞ってたのかと思いきや、天然だったのはちょっとビックリ。罪な男…！付き合い始めて、青くん達にも紹介したんだろうなとか、色々妄想したくなっちゃいます。次回作も楽しみにしています。 (8月20日 1時) (レス) id: 22105fbc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年7月14日 22時
