#38 ページ38
インターホンが鳴った。
あぁ、きっと彼女やろなと思う。
不思議と驚きも緊張もしなかった。
「はい」
先輩がいない間に片をつけてしまえば、後は楽。
広く解釈すれば、彼女を追い払うのは俺の役目だ。
『重岡くん…？ちょっと話があるんやけど。開けてくれへん？』
「今シャワー浴びてて。俺が代わりに対応しますね」
一応身構える。
流星から何となく護身の術は聞いてる。ほとんど彼の武勇伝みたいなもんやけど。
「……！」
顔を見て、彼女も合点がいったんやろな。
あの時の…という言葉は多分、先輩が不意打ちでキスしてきた日のこと。
「大毅からあなたのことは聞いてます。家まで来られると流石にこちらも、何かしら対応しないと、」
「対応って…私、ただ彼に話があって来ただけで。結婚の話、良い返事がなかなかもらえないから直接説得させてください」
「っ…、俺、ほんまに大毅のこと好きなんです。やから、俺たちのことそっとしておいてくれませんか」
口にすると思ったより切実で情けなくなる。
彼女を騙すための、台本に書かれたセリフみたいなものなのに。
「別に、私と結婚してもあなたとの関係はそのままでいいって重岡くんには伝えましたよ。文句言われる筋合いないっていうか」
まっすぐと、自分が正しいと思って疑いもしない瞳。
ほらやっぱり女の子にすれば良かったのに。
そうしたらこんな馬鹿げた提案されなかった。
「…それって俺が女の子でも同じこと言うんですか？俺が、大毅との子供を身籠ってても同じこと言うんですか？」
引かれるなんて曖昧な理由、やめておけば良かったのに。
そうしたら、目の前の彼女やってもっと簡単に諦めたやろし、…俺もこんな悲しいこと言わなくて済んだし。
「そんなたられば、意味ないやろ。やって今重岡くんはあなたと、男の人と付き合ってるんやから。むしろ彼やってご家族のこと安心させられて良いんちゃう？結婚する気がないなら尚更、今のうちに既成事実作っておいたら楽やと思うよ」
巻かれた髪が右耳から落ちる。
それを左手で掬うと、彼女は緩く微笑んだ。
「こっちもこっちで余裕ないねん。疲れた。毎日親からいつ結婚するんだって言い続けられて、30歳になったら女の価値はなくなるって押し付けられて。もうあと10分もすれば私の価値はなくなってしまうみたい」
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ナナセ(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。完結まで漕ぎつけられたのはあさんを始め、たくさんの方が読んでくださったおかげです！最後までお付き合いいただきありがとうございました☺️ (8月22日 9時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ゆきのさん» コメントありがとうございます。赤さんは途中から💚さんへの気持ちに自覚が出てきたので、だんだん会いたいだけで誘うようになったし、キスもそういうことです🙊 最後までお付き合いいただきありがとうございました！ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - foolさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ありません💦 緑さん可愛いファンクラブ(自称)なので嬉しいですー！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初コメ失礼いたします。完結おめでとうございます！緑くんの恋が実って良かったです😭今回も素敵な作品ありがとうございました！ (8月21日 20時) (レス) id: f17f5e7704 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - もともと緑くんが好きだったから、見えない所でも恋人っぽく振る舞ってたのかと思いきや、天然だったのはちょっとビックリ。罪な男…！付き合い始めて、青くん達にも紹介したんだろうなとか、色々妄想したくなっちゃいます。次回作も楽しみにしています。 (8月20日 1時) (レス) id: 22105fbc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年7月14日 22時
